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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「きょうはトシのパスで決める」佐藤寿人が熱く語る最高の相棒・青山敏弘との“伝説のゴール”…「トシのボールにはメッセージがあるんです」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/12/28 17:03
2024年12月1日、ホームのコンサドーレ札幌戦後の引退セレモニー。佐藤寿人らが登場し、青山は熱い涙を流した
青山は今回のインタビューで自分のパスについてこう述べている。
「自分にとってパスというのは求めてくれる人たちへの答え。チームメイトが、サポーターが期待してくれるその先を越えていくもの。求められるから、それ以上を出したいって思えるから」
期待され、要求され、何より自分が応えたいと思えるから、バージョンアップが繰り返された。その先に札幌戦のシーンがあった。
佐藤のなかで一番気持ちの良い瞬間
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チームは次節の浦和レッズ戦に敗れながらも、最後はセレッソ大阪、ヴィッセル神戸を相手に連勝して悲願の初優勝を達成する。佐藤はこの年、22ゴールをマークして得点王に輝き、リーグMVPにも選出された。
佐藤は噛みしめるようにして言葉をつむぐ。
「僕が2005年にサンフレッチェに移籍してきて、トシがまだ20歳前後のころからずっと要求してきたし、(ホットラインを)つくっていく作業を妥協なくやってきましたから。普段の練習から凄いパスが来る。僕のなかでは、青山敏弘という最高のパッサーからボールを受けて決めたときが一番、気持ちの良い瞬間なんです。
札幌戦も、もちろんそうでした。確かに初優勝のプレッシャーは僕もトシも、ほかのチームメイトにもあって、なかなか躍動感のある戦いができていなかった。その意味でも、みんなを勇気づけるようなシーンでもあったかなって思います」
青山のパスが導いたもの
〈プレッシャーに打ち勝とう、自分たちらしく戦って優勝しよう〉
思いを受け取ったのは佐藤のみならず、チームメイトもきっと同じであった。吹き込むだけでは十分に非ず、しっかり伝わってこそのメッセージである。
勇気づけて奮い立たせて、お互いに積み上げて、応え合って。青山敏弘のパスは、共鳴を導く唯一無二のパスだった。
〈つづく〉