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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「きょうはトシのパスで決める」佐藤寿人が熱く語る最高の相棒・青山敏弘との“伝説のゴール”…「トシのボールにはメッセージがあるんです」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/12/28 17:03
2024年12月1日、ホームのコンサドーレ札幌戦後の引退セレモニー。佐藤寿人らが登場し、青山は熱い涙を流した
それは前半31分だった。ハーフウェーライン手前でパスを受けた青山は、中央やや右寄りからペナルティーエリア内左に入っていく佐藤に向かってボールを蹴り出す。バックスピンが掛かり、佐藤のシュートポイントに合わせ、追いかけてきたディフェンダーはギリギリ間に合わない。佐藤はそのバウンドに合わせて左足を振り抜き、逆サイドに叩き込んだ。
針の穴を通すパス
佐藤は言う。
「あの直前、ポストプレーをして削られて起き上がったときにはまだ右側にいたんです。偶然にも(相手から)隠れることができていて真ん中のスペースが空いていたので、トシにボールが入ったらそこに入って受けよう、と。カズ(森﨑和幸)からトシに渡ってスイッチオンだなと思って、ダイアゴナルで相手の背後を取りにいきました。でもトシは僕を認識していなかったはずなんです。本来、自分がスタートを切る位置とは違っていましたから。どこが空いているかをトシは瞬時に判断してきたんです」
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いつも以上のトライ。その要望どおり、いやそれ以上のパスがシュートを打ちやすい質で自分のもとにやってきた。
「針の穴を通すって言いますけど、まさにそんな感じでした。トシが通して、僕が走り込んで最終的にはシュートする場所で重なり合った感覚。いろんな選手のパスを受けてきましたけど、ほかの選手との決定的な違いみたいなものはボールにメッセージをこめてくるんですよ。言葉になっているっていうんですかね」
青山のボールにこめられたメッセージ
〈寿人さんなら感じてくれますよね。寿人さんなら決めてくれますよね〉
そんなメッセージが伝わってきたからこそ、逆に力むことなく自分の役割を果たすことができた。相手も背後から滑り込んできたシチュエーションで、バウンドに合わせてミートさせてGKに触らせないシュートを打ち込むのだから、佐藤としても容易なミッションではなかった。
最高のパスに最高のシュートで応える。それは逆も然り。佐藤が決めてくれるからこそ、青山の極上パスも磨かれていった。