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「日本の球団はドラフト1位でも行きませんと」偏差値71の名門高の153km・45発“化け物”二刀流・森井翔太郎はなぜ直接アメリカを目指すのか 

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内田勝治

内田勝治Katsuharu Uchida

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photograph byTakashi Shimizu

posted2024/12/20 17:03

「日本の球団はドラフト1位でも行きませんと」偏差値71の名門高の153km・45発“化け物”二刀流・森井翔太郎はなぜ直接アメリカを目指すのか<Number Web> photograph by Takashi Shimizu

最速153キロを投げ、推定130mの飛距離で45発を放った大器、森井翔太郎。プロ注目の素材だったが米球界に身を投じる

 高校入学時の178センチ、76キロから、3年時は183センチ、86キロまで成長。ウエイトトレーニングを一切行わず、自重のみで鍛え上げたしなやかな肉体から、投げては最速153キロまで到達し、強肩と華麗なグラブさばきを生かした遊撃守備の評価も高い。自分で課題を見つけて取り組むチームカラーがマッチし、プロやメジャーが注目する選手となった。

最後の大会は初戦敗退

 ただ、一人で勝てるほど野球は甘くない。3年夏、都富士森との西東京大会初戦、日米14球団42人のスカウト・編成関係者が詰めかける中、「3番遊撃」で出場も、初回から先発投手が5点を奪われ、急遽リリーフ登板。最速147キロをマークするなど、4回2/3を1失点と粘りの投球を見せるが、打席では3打数無安打と結果を残せなかった。結局2対9で7回コールド負け。甲子園はほど遠く、短い高校野球生活は幕を閉じた。

「中学から6年間やってきた仲間たちと長く野球をやりたいと思っていましたけど、球場に入った時の観客の多さであったり、ちょっと異様な雰囲気を感じて、出だしがよくなくて……。最後の大会は悔しさしかないです」

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 注目の進路は、この時点で「日本のプロ野球」「米国の大学進学」の2択だったという。

「メジャーのことは自分もよく分かっていませんでした。まずはマイナー契約からで、最下位に位置づけられるルーキーリーグから始まるのですが、正直言って情報不足でした。その時点では、メジャーのことはちょっと考えられないかなと思っていました」

渡米して見えたビジョン

 ただ、9月上旬に家族で渡米し、メジャー、1Aの試合を自らの目で見たことで、状況が一変した。メジャーリーガーになるという最終目標を再確認し、そのためにはマイナーから這い上がっていくことが一番の近道だという思いに至った。

「試合を見ながら、米国の生活がどういう風になっていくのかなとイメージして、『ここでやっていくんだ』という明確なビジョンができました。自分は結構適当というか、そこまでカッチリしているタイプではないので、米国のフランクな感じがあっている部分はあるのかなと思いました」

 6日間の視察から帰国後、正式に米球界挑戦を表明した。MLB球団と接触する場合も、プロ志望届の提出が必要で、森井も渡米前に提出済み。ただ、花巻東時代に米球界入りを希望した大谷翔平を日本ハムが強行指名したように、NPB球団は本人の意思に関わらず、ドラフトで名前を挙げることができる。

【次ページ】 たとえ1位指名でも

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