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「怖く見えるけど、めっちゃ優しい」上田桃子が38歳でツアー活動休止…記者が明かす“負けず嫌いな上田”が泣いた日「声をかけづらい選手だったが…」
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byAtsushi Tomura/Getty Images
posted2024/11/25 17:00
今季限りで第一線から退くことを表明した上田桃子(38歳)
2014年に日本ツアーに復帰してからは、水を得た魚のように同年2勝して完全復活。その後も優勝を重ね、最後までシードを落とすことは一度もなかった。
数年前、シーズンオフに上田が主催するメディアの食事会に参加したことがあった。一般紙、スポーツ新聞の記者やゴルフ専門誌編集者らを囲み、日頃からお世話になっているからと感謝の気持ちを込めての会だった。このような場を設ける選手はほぼいない。そもそも、こうした気配りには正直、驚かざるを得なかったし、ざっくばらんに楽しい会話をする姿がまた新鮮だった。彼女の人柄に惹きつけられるのは、こういう部分にあるのだろう。
昨年、イ・ボミの引退試合でも、上田桃子の愛される人柄を知れる出来事があった。『NOBUTA GROUPマスターズGCレディース』でホステスプロのイ・ボミは、最終日のティーオフでウグイス嬢を務めた。上田桃子がティーグラウンドに登場すると選手の紹介でこう言った。
「ツアー通算17勝。2017年のチャンピオン。怖く見えるけど、めっちゃ優しいお姉さん。ZOZO所属、上田桃子」
この紹介に本人もギャラリーも大爆笑。実際、本当に怖ければこんなことは言えない。気さくで親しみやすく、情に厚い、“姉御肌”の上田が選手たちからどれだけ愛されているのかが知れるシーンだった。
記者を寄せ付けなかった集中力とオーラ
思い返せば、取材する側からすれば、とても“声をかけづらい”選手だった。練習ラウンドの日は、合間に選手たちに声がけができるのだが、上田の集中力と練習後のオーラから、声をかけられなかったのは一度や二度ではない。
それでも囲みや個別取材、競技者としては最後となった今回の会見で出てくる言葉の一つ一つに重みあがり、グッと引き込まれる。
「明日からゴルフのことを考えない時間が来るんだなというのが、自分の中ではかなり非現実的です。20年、毎日、休んでいるときもゴルフを考えて生活してきたので、それがないんだなという寂しさはあります」
プロゴルファーとしてもアスリートとしても、女子ゴルフ界屈指のプロフェッショナルの鑑と言っても過言ではない。38歳になっても四六時中、ゴルフのことばかり考えていたと聞けば、あまり心が休まる場はなかったのではないかとも思ってしまうが、2021年には結婚もして、公私ともに充実した毎日を送っている。年を重ねても勝ち続けているだけでなく、人間的な魅力が多くの後輩たちを惹きつけている。