酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
ドラフト裏話「え、調査書1枚だけ?」阪神育成3位に涙ぐむ女性、早川太貴も目を赤くして「悔しいと思いますが」くふうハヤテ会見に記者が密着
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/10/28 11:00
阪神育成3位で指名を受けた早川太貴。市役所勤務経験のある野球選手としても注目を集めそうだ
今年から同じくファームリーグに参加したオイシックス新潟は、複数人に調査書が届いたそうだが、ヤクルトの育成3位で投手の下川隼佑の名前が呼ばれた。
場内にじわっとため息のような声が上がる。もちろんこのまま名前が呼ばれないままドラフト会議が終わることだって当然ある。
「指名がなくても記事、書く?」
会場にいたライター仲間に聞くと「まあ、書くでしょうね」とのことだった(筆者も同じ想いだが)。
「いやー、良かった」涙ぐむ女性も
下川の指名から十数分後、会議開始から約3時間が過ぎた頃だった。
「阪神タイガース、はやかわ」
ワッと歓声が上がり、あとは聞こえなかった。早川と池田社長が抱き合い、控室へと駆け出していく。
報道陣はほとんどが地元メディアだ。球団スタッフが会見場の準備を始めると、メディアも机を動かしたり手伝い始める。「いそいそと」という表現がぴったりだ。
「いやー、良かった」
筆者も心からそう思った。ドラフト会議の全プログラムが終了し、番組が終わると早川と池田社長が会見の席に座った。涙ぐんでいる女性もいる。
「もう呼ばれないかと思ったけど、阪神さんから指名されて本当にうれしいです。育成ということなので支配下目指して頑張ることになると思います。周囲の方々に支えていただき、全然だめだった開幕戦から(早川はオリックス戦に先発し4回自責点5で敗戦投手)、徐々に投げられるようになりました。首脳陣やスタッフ、そして一緒に努力した仲間のおかげです」
早川はとつとつと話した。それに続いて池田社長もこう語る。
「彼は夏場に成績が落ちました。猛暑でバテてしまったのですが、北海道出身の早川にとって、本州の夏は初めての体験でした。それを乗り越えて指名されたんです。僕は指名されると確信していました」
実は早川は昨年、社会人のウイン北広島時代にもプロから声がかかったが指名されなかった。その悔しさもあり、ファームリーグにチャレンジしたのだ。
「昨年11月のうちのトライアウトに、早川が参加してくれたんです。いったいどこで聞きつけたのかと思いますが、本当にうれしかったですね」
「悔しいと思うんですが…」早川の目が一瞬赤く
池田社長に「杉原行洋オーナーにも連絡したか?」と聞いた。
「もちろんです。オーナーはもともと阪神ファンだったので大喜びでした。うちのホームユニフォームの縦じまもそれにちなんでいるんです」とのことだった。
早川の目が一瞬赤くなったのは、宮崎のフェニックスリーグでプレーしているチームメイトからのSNSについて話した時だった。