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〈激動のオフ〉5球団で監督交代のプロ野球「コーチのなり手がいない…」深刻事情に見る“セカンドキャリア”のリアルと「求められる指導者像」
text by
五十嵐亮太Ryota Igarashi
photograph byNanae Suzuki/JIJI PRESS
posted2024/10/22 11:01
今季限りで退任した中嶋監督と今江監督
フェニックスリーグや秋季練習も始まり、阪神の藤川球児監督や西武・西口文也監督など、新監督も動き出しています。来シーズンの指揮官の顔ぶれを見ると、その球団のかつてのスター選手が監督に就くケースと、指導者時代の手腕を買われた実務派が昇格するケースと半々くらいに感じます。
スター監督ならではの力
それぞれやりやすい面と大変な面があるとは思いますが、スタートの時点で考えるとやはり、選手として結果を残した人の方が入りやすいところは多いはずです。選手からのリスペクトもあるでしょうし、同じアドバイスをするにしても説得力が違う。実務派監督はとにかく、結果を積み上げていかなければいけないので、その分プレッシャーも大きいかと思います。
現役時代、さまざまな選手、監督と出会って感じていたのは、一流選手は総じて対応する能力が高いということ。野球人生には必ずいい時と悪い時の両方が訪れますが、一流選手は悪い時や何かが起こった時、乗り切れる力を備えている。困難を乗り越えられる、最小限のダメージで回復できる。そういうノウハウがあるからこそ、長く現役で活躍できたのだと思います。ですから、そういうスター選手は監督として困難を前にした時もタフさや底力がある。肝が据わっていて、勝負勘を持ち合わせているということも肌で感じてきました。
コーチのお誘いを断ったのは…
新シーズンに向けて各球団のコーチ人事も続々と発表されています。実は僕も現役引退後にある球団からコーチのお誘いをいただいたことがありました。色々と考えてお断りさせていただいたのは、指導者になる道が嫌だったわけではなく、とにかく一度外から野球が見てみたいと思ったからです。現役時代はリリーフだったのでその景色からしか野球を見たことがなかった。だから色々な角度から野球を見て、色々な人に話を聞いてもっと視野を広げたいと思っていました。
実際に現役時代より今の方が断然野球に詳しいですし、より野球を楽しめている。これから先、指導者として現場に戻り勝負の緊張感を味わいたいと思うこともあると思いますが、その時のためにも今、こういう時間を過ごすことは大切だと思っています。「よくテレビに出ていますね」と言われることも多いですが、めいっぱいスケジュールを詰め込んでいますからね。お酒を飲みすぎないよう、暇な時間がないようにしているんです(笑)。
コーチのなり手がいない?
最近は選手が現役引退後に現場に残らないというケースも増えているようで、「コーチのなり手がいない」という話も耳にします。現場に残ったとしても数年後にクビになり、さらに歳を重ねた状態で社会に出ることに不安もあるでしょう。以前に比べてセカンドキャリアも多彩になっていて、コーチという仕事への魅力や金銭的なものも含めて、選択肢が多様化したということだと思います。