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同期に「観察日記」をつけられ…長与千種が明かした“壮絶なイジメ”の記憶「おまえ、負け犬になんのか」クラッシュ・ギャルズ結成前の知られざる苦悩 

text by

伊藤雅奈子

伊藤雅奈子Kanako Ito

PROFILE

photograph byL)AFLO、R)Shiro Miyake

posted2024/09/22 11:03

同期に「観察日記」をつけられ…長与千種が明かした“壮絶なイジメ”の記憶「おまえ、負け犬になんのか」クラッシュ・ギャルズ結成前の知られざる苦悩<Number Web> photograph by L)AFLO、R)Shiro Miyake

クラッシュ・ギャルズで一世を風靡した長与千種。しかし全女入団当初は、苦悩の連続だったという

――昭和55年デビューの同期は、ビューティ人気があって13人ほどいましたね。

長与 そのノートを先輩に見せて、ケラケラ笑ってるわけ。みんながノートを見てすごい笑ってるのを、バスのなかで見てて。そのころ、寮の部屋の2段ベッドの下に自分は寝てて、たまたま、同じく下で寝てる人の枕のところに、そのノートが置いてあったんで、なんだろうと思ってパラッと見たら、自分のことがさんざん書いてあった。

――悪口が。

長与 そう。たとえばね、バナナをもらったの。そのころってお金がなかったから、バナナ1本を食べるのも、自分のタイミングで食べたいわけ。バナナを洋服棚のところに入れとくと、忘れちゃってて、コバエが発生しちゃった。「あいつは汚いやつだ」とか、まぁ、些細なことが大きくなって、いろんなことが書かれてたのを見たときに、自分のことであの人たちは笑ってるって思った。それが、まず1つ。16~17(歳)のときかな。

「グレたんじゃなくて、自分で自分を守るしかなかった」

――入団した翌年あたりからですね。

長与 もうね、辞めたいなと思ったの。そのとき、母親が卵巣のガンになってしまった。父親が働きながら1人で母の面倒を見てたんだけど、工事現場で重いものが頭の上に落ちてきてしまって、ヘルメットをかぶってたんだけども、目が一瞬見えなくなって、網膜が全部剥離しちゃった。何度も手術をしたけど、片目を失明してしまったんだ。この2つが続いたときに、自分が言いたかったこと、「辞める」って言えなくなった。「辞めたいなぁ」という言い方をしたことはあったんだけど。親はね、自分がそんな状況でも仕送りをしてくれようとしてたんだよね。これが、2つめ。

――精神を直撃する“観察日記”は、相当な痛みをともなったと思いますが。

長与 世のなかにいじめを受けてる人たちがいるとするならば、精神的なほうがめちゃくちゃきついと思う。でも、自分の場合はそのときにはじまったわけじゃなくて、小学生、中学生のころもあったんで。両親と一緒に暮らしてなかったから、人から必要とされるものを自分自身が持てていなかったりすると、周りからいろんなことを言われてしまうのね。(地元の長崎県から兵庫県に出稼ぎに行っていた)親の仕送りで生活してて、親戚の家をたらい回しにされてた時期があったんで、「これが欲しい」っていうことを言えなかったのね。中学生のときにはその時代の流行があって、みんなと同じはやりの物を持ってないと恥だったり、ちょっとハブられるとか。ハブられるだけならいいけど、裏でコソコソ言われるとか。

――……。

長与 小学生のときもそう。そういうときって、先生からの助けが欲しいわけじゃなくて、アドバイスがひとつ欲しいだけなんだけど、それをいっさいもらえなかったから。グレたとか、非行に走ったとかじゃなくて、自分の力で自分を守るしかなかった。

創業一族から言われた「おまえ、負け犬になんのか」

――ハブられる世界とおさらばしたはずなのに、女子プロの世界でも続いてしまったと。

長与 そう、そう。自分にいじめられる要素があったなら、自分も良くはなかったけど、それは漠然としていてわからない。いまでも、その答えはわからない。じゃあ、ずっと引きずったのかっていったら、そうではなくって、若いときに人並みに経験したなっていうことかな。いまは同期とごはんを食べに行ったり、そばにいてくれることがとても心地いいし、大人になって何も言わなくても寄り添えるようになった。それまでは子どもだったのかなっていう気がしてる。

――次のターニングポイントは。

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