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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「金銭的な部分も含めて、業界を変えたい」世界を知る女子レスラーの思い…Sareeeが「プロレスは普通のスポーツとは違う」と考える理由
posted2024/07/28 17:11
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
マリーゴールドとSEAdLINNNG、女子プロレス2団体のシングル王座を持つSareee(フリー)だが、新人時代は他団体の選手を「うらやましい」と思っていたそうだ。
父に連れられ、初めて会場でプロレスを見たのが小1の時。
「その瞬間からプロレスラーになりたいと思いました。チャンピオンベルトを巻いた、強い女の人がカッコよくて。でも部活はバレー部だったんですよ。柔道とかレスリングとかプロレスに役立ちそうなものをやる発想がなかった。親もそうでしたね。今思うと“やらせといてよ”って感じですけど(笑)」
新人時代はとにかく受身の練習をした。井上京子、伊藤薫といったベテランたちの指導で徹底的に基礎を仕込まれる。10代のルーキーは老舗・全日本女子プロレス(全女)のイズムをベースに持つことになったわけだ。
「なんで毎日毎日、同じ基本の練習ばかりやらされるんだろうって思ってました。他団体の同世代の選手は、どんな練習をしてるか分からないけど華やかな技を出していて“うらやましいな”って。私が使える技はドロップキック、ボディスラムとか数えるくらいで。
でも、今となってはそれがよかったんだと分かります。受身の練習をひたすらやったおかげで、怪我をしない体ができました」
「毎回ボコボコにされていた」新人時代
技もそうだ。基本技一つ取ってもおろそかにしていないから、158cmの小さい体でも“重み”のある試合ができる。隙あらば顔面を射抜くドロップキックのタイミングや迫力は、業界屈指と言っていいだろう。
少ない技でどう闘うか、考える作業も人一倍した。デビュー戦の相手は里村明衣子、翌月にはアジャコングと対戦した。周りは強くてデカい選手ばかりだった。
「アジャさんとは最近もタッグを組んだんですけど、いまだに緊張しますね。それだけの怖さがある人です。新人時代は全女出身の先輩方がたくさんいて、100kgを超えるような選手と闘って、毎回ボコボコにされてました」
この人たちには何をやっても敵わない。そんな経験が自分を強くしてくれたとSareee。