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角田裕毅の鈴鹿は「最高傑作」チーム格差を跳ね返しトップ5チームを食った“10位”の価値とは?「私たちにとっては優勝したようなもの」
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尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool
posted2024/04/11 11:01

チームとともに10位入賞を喜ぶ角田
その格差は今年になって、さらに広がった。開幕戦バーレーンGPではトップ5チームのドライバー全員が完走し、1位から10位までを独占。そのため、下位5チームが入賞するには上位勢にトラブルや事故が起きないと、ほとんどチャンスがない状況となっている。第2戦サウジアラビアGPで下位5チームのひとつであるハースのニコ・ヒュルケンベルグが10位入賞できたのは、トップ5チームのアストンマーティンのランス・ストロールがリタイアしたことで巡ってきたチャンスだった。
前戦オーストラリアGPでハースの2台と角田が入賞できたのも、フェルスタッペンとメルセデスの2台がリタイアしたことが大きかった。
日本GPではトップ5チームのドライバー全員が完走した。にもかかわらず、角田が入賞できたのはトップ5の壁を自ら突き崩したからにほかならない。今回の10位は決して幸運ではなく、実力で獲得した1ポイントなのだ。
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そのことを理解しているからこそ、鈴鹿でトップ5の一角であるアストンマーティンのランス・ストロールの前を走る角田を、スタンドのファンは毎周のように応援していたのだろう。
さらなる高みへの課題
ガレージの中でレースを見守っていた角田のマネージャーを務めるマリオ宮川は、その声援や拍手を聞きながら、12年前の感動を思い出していた。宮川は当時可夢偉のマネージャーを務め、ともに美酒を味わっていたからだ。その宮川は今回の角田の10位を称え、レース後、角田を抱きしめた。
「大げさに聞こえるかもしれませんが、現在のF1でユウキが所属するRBのマシンで10位という結果は、私たちにとっては優勝したようなもの。本当に特別な瞬間でした」
今後、角田がさらに上位に食い込み、表彰台や優勝を実力で争うには、トップチームへ移籍することが条件となる。そのために角田がいまできることは、トップ5チーム以外のドライバーの中で、常に上位にいること。そして、チャンスがあれば、トップ5チームのドライバーを1人でも多く倒すことだ。
春の日本GPで見せたあの走りを、これからも続けてほしい。
