甲子園の風BACK NUMBER

「大阪桐蔭に勝って少し浮かれた」決勝6失点KOでボウ然から1年…報徳学園“Wエース主将”とベンチからの「油断するな、気を抜くな!」

posted2024/03/31 11:03

 
「大阪桐蔭に勝って少し浮かれた」決勝6失点KOでボウ然から1年…報徳学園“Wエース主将”とベンチからの「油断するな、気を抜くな!」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

報徳学園の“ダブルエース”の一角・間木歩。背番号1のキャプテンは1年前のリベンジに燃えている

text by

間淳

間淳Jun Aida

PROFILE

photograph by

Hideki Sugiyama

 悔しさは残った。だが、足取りは軽い。

 背番号1をつけた報徳学園・間木歩投手は、スタンドから大きな拍手を受けて駆け足でマウンドからベンチへ戻った。

 2点リードの9回2死一塁。中央学院・蔵並龍之介選手が放った打球はレフトへ。報徳学園のレフトがスライディングキャッチを試みるが、わずかにグラブが届かず二塁打となった。大角健二監督が、ブルペンで準備していたもう1人の主戦投手・今朝丸裕喜投手を送り出す。勝利まで1アウトを残して、間木はマウンドを降りた。

「走者を残して交代する、投手としてやってはいけない形にしてしまいました。今朝丸にマウンドを譲らない気持ちでいたので悔しいです」

大阪桐蔭に勝利、決勝も4回まで無失点だったが…

 勝利の瞬間はベンチで迎えたが、エースの役割を十分に果たした。

 昨年のセンバツで、間木は天国と地獄を味わっていた。大阪桐蔭との準決勝。2番手で登板した間木はチームに流れをもたらす投球で、5点差をひっくり返す立役者となった。

 だが、その翌日は野球人生で最も悔しい日となる。

 決勝の先発を託された間木は山梨学院相手に4回まで1安打、無失点と好投する。

 暗転したのは2点リードの5回だった。1死から四球を許すと、8番打者の林謙吾投手にレフトの頭を越える二塁打を浴びた。打撃が得意には見えなかった選手の長打に、間木は混乱した。まだ失点していない状況、しかも2点リードしているにもかかわらず冷静さを失う。9番打者にタイムリーを許して同点にされると、さらに3連打を食らう。6失点を喫した放心状態で今朝丸にマウンドを譲った。

 山梨学院に一挙7点のビッグイニングをつくられた報徳学園は、3-7で日本一を逃した。試合後も間木の表情は固まったままだった。地面を見つめて、言葉をしぼり出した。

「林投手に、あそこまで飛ばされてしまって動揺しました。自分の持っている球を全て打たれてしまって、どうしようと……」

あの日は“ただ打者に投げているだけ”になっていた

 あの日から、ピンチになるとめった打ちでKOされたシーンが頭に浮かぶ。しかし、それはトラウマではない。

【次ページ】 「元々おちゃらけるタイプ」が主将になって

1 2 3 NEXT
#報徳学園高校
#間木歩
#今朝丸裕喜
#西村大和
#徳田拓朗

高校野球の前後の記事

ページトップ