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「史上最高の右打者は落合だ」野村克也は、なぜ落合博満を認めたのか? “ID野球”も“オレ流”も知る4人の教え子が語る「ウラの顔」 

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph byKoji Asakura,Tamon Matsuzono

posted2024/02/11 11:04

「史上最高の右打者は落合だ」野村克也は、なぜ落合博満を認めたのか? “ID野球”も“オレ流”も知る4人の教え子が語る「ウラの顔」<Number Web> photograph by Koji Asakura,Tamon Matsuzono

野村克也と落合博満、どちらとも関係がある4名の野球人が“似て非なる名将”の残像を語った

 中日に移籍する前にはヤクルトで野村克也と9シーズンを過ごしている。川崎は1995年日本シリーズの思い出を口にした。

「95年、オリックスとの日本シリーズ直前、イチロー対策のミーティングが行われました。そこで“極秘”と書かれたプリントが配られました……」

 そこには「振り子打法のイチローは内角に弱点があるから、インコースで勝負するように」と書かれていた。川崎が続ける。

「ところが、そのミーティングの翌日には“極秘”であるはずのインコース攻めがスポーツ新聞で報じられていました。ノムさんがマスコミにしゃべっていたんです」

 その後、第1戦直前のミーティングで、野村は選手たちを前に言った。

「いいか、イチローはテレビも新聞も見ているはずだ。彼の頭にはインコースへの意識がある。お前ら、アウトコースで勝負しろ」

 川崎が当時の心境を振り返る。

「意図的にマスコミを使った作戦だったのか、リップサービスでマスコミに言ってしまったのでアウトコース攻めに方針を変えたのか。真相はわからないけど、結果的にイチローを抑えることには成功しました」

 敵を欺くには、まず味方から――。

 両者ともその戦術を使いながら、極秘は極秘のまま徹底した落合と、それを逆手にとってマスコミを使った野村。その方法は両極端だった。

後編に続く)

#2に続く
野村克也と落合博満「交流戦のたびに個室にこもって…」4人の証言者が語る“ID野球”と“オレ流”「なぜ2人はウマがあったのか?」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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