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騎手の夫に「もう辞めたい」700勝ジョッキー・別府真衣が弱音を吐いた日…本人が明かす、高知競馬から消えた“10カ月休業”の真相
text by
大恵陽子Yoko Oe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2024/02/12 06:01
通算746勝を挙げ、2021年に騎手を引退した別府真衣。2018年に結婚した夫にじつはある相談をしていた
宮川 「やっぱり無理やった。騎手は諦める」って言いました。私の気持ちを受け入れてはくれましたけど、「一緒に乗れなくなるのはすごく寂しい。馬に乗っている姿が好きやし、真衣みたいに乗りたいって思うことが結構あった」と言っていました。「けど、真衣が決めたことやったら、応援するよ」と決断を後押ししてくれました。騎手を辞めるにしても、競馬は好きだったので、競走馬を育て、送り出す調教師を目指すことにしました。
――ご主人は昨年、地方競馬代表としてJRA札幌競馬場でワールドオールスタージョッキーズに出場した名騎手。そんな彼が、デビューした頃からずっと騎乗を評価してくれていたんですよね?
宮川 そうなんです。馬に乗っている時のバランスとか、「この人の感覚を味わってみたい」と思う人が2人いて、そのうちの1人だったみたいです。
騎手の見え方は変わりました
――調教師試験に合格し、2021年秋に騎手を引退しました。調教師になって、騎手のご主人との関係性は変わりましたか?
宮川 仕事面では調教師の方がパワーバランスは上だと思いますけど、だからと言って「やれ」みたいな感じはないです。高知競馬は騎手の人数に比べて競走馬の頭数が多くて、調教に乗れるのはほぼ騎手。みんな調教は忙しいので、夫に限らず騎手には「お願いします」という感じで来てもらっています。でも、騎手としての見え方は変わりました。
――どういうことですか?
宮川 騎手として一緒に乗っている時は、先輩だし上手くて技術もあるので何か思うことはなかったですけど、今は自分の管理馬に乗ってもらっています。その馬にはオーナーがいて、毎日一生懸命世話をしてくれている厩務員もいます。その上でレースを見ると、夫だけでなく他の騎手にも最後まで一生懸命乗ってもらいたい、という気持ちにはなります。
調教師として感じた騎手の夫のすごさ
――多くの人の思いを感じているからこそ、その気持ちが強くなるんですね。一方で、調教師になってみて「ここがすごい」と感じたご主人のポイントは?