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「井上尚弥に勝てる」タパレスを再生させた“優秀な参謀”が不気味な発言…圧倒的KO予想を裏切る“アップセット”を確信できる4つの理由とは?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byDaisuke Sugiura
posted2023/12/25 11:04
マーロン・タパレス再生の切り札として抜擢されたアーネル・フォンテーンニャ(左)。タッグ結成から3連勝を飾っている
バンタム級の世界タイトルを計量失敗で失った経歴も持つタパレスは、20代の頃は不安定な雰囲気を漂わせていた。18歳でフィリピン王者になるなど、一見すると天才型。ただ、ボクシングマガジンの言葉を借りれば、「器用な実力者ではあっても、どこか頼りない。かつてタパレスの評判はそういうものだった」。
そんなタパレスにとって2年前、夫人との間に娘が生まれ、父親としての自覚が芽生えたことが大きな転機になった。それ以来、「別人のように真剣に練習するようになった」と同僚の元IBF世界スーパーフライ級王者ジェルウィン・アンカハスは証言する。
それと同時に、アメリカでのプロモーターを務めるショーン・ギボンズ氏、フィリピンに拠点を置くサンマン・プロモーションズのJC・マナンキル氏によって陣営が整備されたことも好影響に違いない。快適に戦わせるには、有能なセコンドも不可欠。岩佐に敗れたあと、2人のプロモーターたちがタパレス再生の切り札としてトレーナーに抜擢したのがフォンテニーヤだった。
「フォンテニーヤは優れた戦術家」
現役時代はフェザー級選手としてフィリピン、アメリカで9勝(7KO)4敗2分の実績を残したフォンテニーヤは、2019年に引退後、アメリカに渡ってトレーナーを志す。タパレスのカットマンとして岩佐戦を含む3試合に同行したあと、2021年にチーフトレーナーに就任。まだ新米のトレーナーに元世界王者のサポートは大役に思えるが、マナンキル氏はフォンテニーヤ起用を決断した理由をこう説明する。
「アーネルのボクシングに対する熱い情熱は明らかでした。現役時代にアメリカでも戦い、頂点には辿り着けませんでした。引退後、その夢を後に続くボクサーに託すことに情熱を燃やしていたのです。生粋のハードワーカーであり、優れた戦術家。それゆえ、経験不足でもマーロンに適したトレーナーだと判断したわけです」