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「ワクチン支援は自分への励み。僕が投げ続けて結果を残さなければいけない理由のひとつ」和田毅がプロ3年目から続けている社会貢献
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/12/15 07:00
島根県出身、現在42歳。 “松坂世代”最後の現役NPB投手として若手の手本ともなっている
――ワクチン支援を始めたのはプロ3年目ですが、それ以前から寄付や社会貢献活動に興味を持たれていたのでしょうか。
「小学生のころに赤い羽根共同募金を知りましたが、このお金はどこに行くのだろうと疑問に思ったことが最初のきっかけです。幼い頃は親にもらったお金で募金していたけれど、自分のなかでは『募金って自分が働いたお金でするものだよな』という考えがあって、なんとなくすっきりしなかった。社会人になって自分で稼いだお金で募金したときにどんな感覚を抱くんだろう、それを確かめたいと思ったのが入り口だったような気がします。
プロ野球の世界に入ってから、井口資仁さんや川﨑宗則さん、城島健司さんら社会貢献している人がたくさんいることを知りました。そういう姿を目の当たりにして、プロ2年目のオフあたりに自分も何かできないかと支援先を探していたんです」
――ワクチンへの関心を持ったのはなぜでしょうか。
「支援活動がしたいと思って球団に相談していたところ、JCVさんを紹介してもらいました。最初はDMをいただき、ワクチンが足りずに、世界では1日7000~8000人の小さな子どもたちが亡くなることを知りました。今の時代にワクチンが受けられないこと、それによって亡くなる人がいることを想像できなかったので本当にショックでしたね。ワクチン支援を始めたのは、まだ誰もやっていないことをしたかったから。自分の支援が何に使われるのか分かるのもよいなと思いました」
投手であることを生かした支援
――試合で投げた球数に応じてワクチンを寄贈するなど、独自のルールを設けています。
「ただお金を寄付するという方法は、どこか無責任で違和感がありました。僕はピッチャーなので、“投げる”ことを生かしたいと思い、投球数に応じてワクチンを贈る方法にたどり着きました。ワクチンは1本、数十円から100円程度することを聞いて、1球につき1本だとさすがに少ないので、1球ごとに10本のワクチンを支援することに決めました。さらに勝利したときには20本、完投は30本、完封は40本とか。後付けで優勝したら何本、タイトル獲得したら何本など自分たちでアレンジもして、自分への励みにもなるようにしていました」
――ご自身が設定したルールがプレーにもいい形でつながっているんですね。
「自分の結果が良ければ多くのワクチンを贈ることができますし、次のシーズンの自分の年俸アップにもつながります。裏を返せば、僕が投げ続けて結果を残さなければそれができなくなる。自分としてもワクチン支援は、『こんなに投げられたんだな』『来年はもっとこの本数を増やしたいな』と、昔も今もモチベーションの1つになっていますね」