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「来年はアレではなくアベで」巨人新監督会見で阿部慎之助が「変わる」宣言…原辰徳監督から叱られた日「肩越しに話しかけるな」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/09 17:00
就任会見に臨んだ巨人・阿部慎之助新監督
二軍監督になりたての頃に、阿部監督がベンチに浅く腰掛け、背もたれに寄りかかって試合を見ていた。その姿勢に「俺は一度も(ベンチに)背をつけて試合を見たことはない。それは(指導者としての)“行”だと思っている」と原監督が叱ったという話だ。また別の機会だったが「選手に肩越しに話しかけるな。選手と話をするときは、きちんと正面から目を見て話をしなさい」と諭したという話も原監督から聞いたことがある。
そういう一つ、一つの教えを受けながら、阿部監督も指導者としてアップデートを行なってきている。
そうしてコーチとしては黒子に徹して、監督をサポートしてきた。
坂本の三塁コンバートの“伏線”
今季のシーズン中にはこんなエピソードがある。
今季の巨人のエポックメーキングな出来事の一つに坂本勇人内野手の三塁コンバートがあった。9月7日のヤクルト戦でプロ入り以来17年間、ショート一筋だった坂本が、通算2081試合目で三塁で先発出場したのだ。この三塁起用について坂本は、「8月末に原監督から打診された」と話している。
ただその監督の打診には伏線があった。
坂本は右太ももの肉離れで6月24日に登録を抹消され、約1カ月後の7月28日に一軍復帰を果たしている。このとき実はヘッドコーチだった阿部監督が、サシで本人と守備位置について話し合いを行なっているのだ。その話し合いで坂本はチーム事情も考慮した上で「自分はショートへのこだわりはありません」とコンバートを受け入れる気持ちを阿部ヘッドコーチに伝えていた。
最終的にこの時は原監督の判断ですぐにはコンバートが実現はしなかった。ただこうした阿部ヘッドコーチのサポートがあり、本人も納得した上で、あのコンバートはすんなりと実現の運びとなったのである。
「慎之助がよくやってくれている。人としても、コーチとしてもすごく成長している。秋広(優人内野手)や門脇(誠内野手)とか、時を惜しまず若手の指導に情熱を燃やし、彼の指導者としてのエネルギーというのは経験を積むごとに大きくなっているように感じる」
原監督はこう評している。だから「慎之助で良かった」と安心してバトンを渡すこともできたのだろう。