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“小学生からライバル”藤井聡太vs伊藤匠「2人で41歳」はタイトル戦最年少…佐藤康光立会人が「えっ、これは事件だ」と竜王戦で驚いたワケ
posted2023/10/09 11:24
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Keiji Ishikawa
将棋界の「秋の陣」は最高棋戦の竜王戦で始まる。今年の第36期竜王戦七番勝負は、藤井聡太竜王(21=名人・王位・叡王・棋王・王将・棋聖を合わせて七冠)に伊藤匠七段(20)が挑戦している。タイトル戦で両対局者の合計年齢が41歳は、最も若い記録である。
両者は9歳のときにある小学生大会で対戦し、伊藤が勝って藤井を大泣きさせたエピソードは有名だ。タイトル戦に初挑戦した伊藤の棋士としての歩み、藤井への対抗心、竜王戦第1局の戦いぶりなどについて、田丸昇九段が解説する。
藤井が四段昇段したとき、伊藤はまだ初段だった
藤井竜王と伊藤七段は同学年で、小学3年生のときに大会で対戦した間柄。藤井は2012年に奨励会(棋士養成機関)に10歳で6級で入会、伊藤は2013年に同じく6級で入会した。両者の入会は1年違いだったが、以後の昇進ペースで藤井が大きく引き離した。
藤井が2016年9月に最年少記録の14歳2カ月で四段に昇段して棋士になったとき、伊藤はまだ初段だった。
伊藤が2020年9月に17歳11カ月で四段に昇段して棋士になったとき、『将棋世界』誌に昇段記念の文章を書いた。その一節を紹介する。
《初段の時に同学年の棋士が誕生した。そこから彼の活躍は凄まじく、こちらも意識せざるを得なかった。彼はいつ見ても勝っていて、その度に自分が情けなく思えたが、早く上がらなければ、と刺激になった。いまはだいぶ離されているが、いつか大きな舞台で対戦してみたいと思う》
「彼」とは同学年の藤井のこと。伊藤は小学生時代の好敵手をずっと意識していたのだ。それから3年後。藤井竜王と伊藤七段は、大舞台である竜王戦のタイトル戦で対戦することになった。
「竜王戦5組」からの挑戦は史上初の快挙
伊藤は2022年度のC級1組順位戦で、9連勝してから最終戦で敗れた。その結果、同成績の9勝1敗が4人いて、規定によって順位最下位の伊藤だけが昇級を逃した。
しかし、伊藤は順位戦での悔しさを晴らすように、竜王戦で大活躍していった。