野ボール横丁BACK NUMBER
高校部活のパワハラ…実は“いい監督ほど苦悩”する現場「許される体罰」が消えた今、指導困難校はどう対応すべきか? 弁護士に聞く“注意点”
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNanae Suzuki
posted2023/10/01 11:03
体罰・パワハラ発言は絶対NGのいま、指導困難校の監督が子ども接する際の注意点とは?(写真はイメージです)
松坂 現代においては、それはもう大いなる勘違いとしかいいようがない。
――私も世代的に『スクール☆ウォーズ』に感動したクチなのですが、おそらく欧米人が観たら、なんでこの教師は逮捕されないのだろうと不思議に思うんでしょうね。
松坂 暴力は犯罪です。愛情があるからといって、暴力が許される時代ではもうありませんからね。
――なぜ日本の社会はこんなにも人権意識に対して鈍感なのでしょうか。
松坂 一人一人が意思決定する権利をもっているという考えが希薄なんでしょうね。個人よりも、組織や集団の意図や利益が優先される。だから、そこの権力者によって、個人の権利が奪われかけても危機意識が働かない。
個人より集団の意向が優先される環境
――丸刈りに関しても納得しているかどうかは別として、選手サイドは、こういうもんだと思い込んでいるんでしょうね。私も学生時代、そうでした。指導者も強制しているという意識すらないのだと思います。
松坂 ただ、日本人の意識も確実に変わってきていると思いますよ。この前、知り合いの高校生の息子が野球部に入るかどうか迷っているときに、監督に「丸刈りにしなければいけないのなら入りません」と言ったら、「丸刈りじゃなくていいよ」って言われたそうなんです。
――そんなに理解のある監督がいるんですね。
松坂 ただでさえ野球の競技人口が減っているというのに「じゃあ、入らなくていい」と門前払いしても、誰も何も得しないじゃないですか。
――冷静に考えたら、そうなんですよね。選手も嫌なら嫌だと言えばいいわけですよね。
松坂 ただ、なかなか言えないんでしょうね。特に日本の野球文化の中では、小さい頃から監督の言うことは絶対だという指導を受けてきて、個人より集団の意向が優先される環境で育っていると思うので。