濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
タップの瞬間、RENAの顔は歪んでいた…“衝撃の敗戦”はなぜ起きたのか? 対戦相手は「またRIZINで試合がしたい」、“カラフルな海外勢”がもたらすものは―2023上半期 BEST5
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2023/09/19 11:01
RENAはクレア・ロペスに敗戦。右膝外側側副靱帯の部分断裂とともに、痛い黒星となった
ノーガードの顔面にフルスイングのパンチを食らったようなものだ。両足の力で思い切りヒザ関節を逆に曲げられ、敗れたRENAは病院に直行した。
精密検査の結果は、右膝外側側副靱帯の部分断裂。右足の指が3本、折れていたのは自身の蹴りがブロックされてのものか。いずれにしても、痛すぎる黒星だ。
“RENA敗戦”の衝撃は確かに大きいが…
だが実際に試合を見ての印象は「RENAが負けた」ではなかった。では何だったかというと「RIZIN、またいい選手呼んだな」だ。RENA敗戦の衝撃は確かに大きい。しかしそれ以上にロペスの奮闘が光った。
1ラウンド、2ラウンド前半の果敢なアタック。グラウンドの蹴りが認められるRIZINのルールを活かしてもいた。さらに中盤以降の粘りはRENAにフィニッシュを許さず、それどころか自分が一本を取ることを最後まであきらめていなかった。アウェーで勝つためには必要な姿勢だ。
「今回がプロ12戦目で、試合が3ラウンドまでいったのは初めてでした。攻防のテンポも速かったですし、打撃戦が続いて緊張感もありました。ボディへの攻撃もありましたし、疲労、緊張、ダメージすべてあって動きが落ちましたね」
そういう中で、彼女は勝ったのだ。付け加えるなら、長時間のフライトを経て日本に到着し、ホテル暮らしをしながらコンディションを整え、その上でRENAの打撃に耐え切った。
ロペスはただの“RENAの復帰戦の相手”ではなかった
日本でやりたいことはあるかと聞かれて「四十七士のお墓参りをしてみたい。本で読んだことがあるんです。今まで読んだ中で一番好きな本です」と答えたロペス。日本での試合は格別な経験だったようだ。
「MMAキャリアの中で最高の経験でした。RENAは強い選手だし日本のスター。日本でRENAと闘うということが、気持ちを高めてくれました。またRIZINで試合がしたい。できたら、今度は適正階級のアトム級かスーパーアトム級(49kg)で」
日本で闘うこと、しかもRENAと闘うことは、ロペスにとって大チャンスだった。勝てばRIZINに定着できるかもしれない。活躍が知れ渡れば、UFCやベラトールといったアメリカのメジャー団体と契約できる可能性も出てくる。キャリア最大の大一番に挑んだロペスは、ただの“RENAの復帰戦の相手”ではなかったのだ。