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「プロ向きじゃないかもしれませんが…」鹿島アントラーズ・岩政監督が語る“復権のカギ”「着想で言うと、イビチャ・オシムさんなんです」

posted2023/09/03 11:04

 
「プロ向きじゃないかもしれませんが…」鹿島アントラーズ・岩政監督が語る“復権のカギ”「着想で言うと、イビチャ・オシムさんなんです」<Number Web> photograph by J.LEAGUE

名門・鹿島アントラーズの岩政監督にその指導哲学を聞いた

text by

北條聡

北條聡Satoshi Hojo

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J.LEAGUE

 目下の戦いぶりに確かな手ごたえを感じつつある。鹿島アントラーズを束ねる岩政大樹監督だ。

「いろいろな人が『お前のやりたいサッカーをやればいい』って言うんですけど(笑)。僕自身、こだわりはない。試合というのは選手のものであって、彼らの個性をいかに出してあげられるか。そこに指導者としてのベースがあるんです」

 とにかく、選手たちがピッチ上で輝いてくれればいいと。トレンドに踊らされ、無理やり選手たちを型にはめ込むようなマネはしない。そうした姿勢が結果的に逆襲の引き金となった感がある。

 シーズン当初は苦戦の連続。8節を終えて、2勝1分け5敗の15位に沈んでしまう。ヴィッセル神戸とのホーム戦では、1-5という記録的な大敗を喫していた。

 転機となったのは9節のアルビレックス新潟戦。指揮官は迷わず手を打った。従来の人選にメスを入れ、新たな組み合わせで再出発を図る。そこから反転攻勢が始まった。

「ピッチへ送ったのは絶えず周りとつながりを持ち、それを心地よく感じながらプレーする選手たちです。いまの選手たちには、それが合いそうだなと」

 新たに先発リストに名を連ねたのがFWの垣田裕暉であり、仲間隼斗と名古新太郎の両MFだった。彼らがFWの鈴木優磨やMFの樋口雄太らの主力と密接に絡みながら、躍進を支えることになる。

「着想で言うと、イビチャ・オシムさんなんです」

 重視したのは選手同士の関係性。そこで説いたのが連動、連続、連係である。それが成立すれば、相手は必ず困るはずだ――と。指揮官には実体験があった。

「着想で言うと、イビチャ・オシムさんなんです。あの頃のジェフですね。実際に守っていて、すごく嫌だったんですよ。本当にとらえどころがなくて。言わば巻誠一郎とマリオ・ハースのペアが垣田と優磨で、その背後から出てくる羽生直剛さんが仲間みたいな。そういうイメージです」

 事実、いまの鹿島の攻撃は極めて流動的だ。それこそ、各々の動きは縦横無尽、神出鬼没。まるで昨季CLで8強に躍進したベンフィカ(ポルトガル)のようだ。相手からすれば、何を仕掛けてくるかが読みにくい。そのぶん再現性に乏しいが、指揮官は意に介さない。

「あらかじめ、相手の出方を読み、こういう立ち位置を取ると決めて戦おうとしたケースもあります。ただ、動きがぎこちなくなって、選手たちが躍動しないんです」

 そうした手法が当世風であろうとなかろうと、選手たちが輝かなければ意味がないというわけだ。あくまでも、重視するのは選手同士のつながり。指揮官はその際のポイントがランニングにあると言う。

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