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「なぜ慶応高はチャンスでフライアウトしても怒られない?」甲子園“勝つ野球”ではタブーだが…現場記者は見た「高校野球の常識が変わる夏」 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/08/25 17:01

「なぜ慶応高はチャンスでフライアウトしても怒られない?」甲子園“勝つ野球”ではタブーだが…現場記者は見た「高校野球の常識が変わる夏」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

107年ぶりの優勝を果たした慶応高。主将の大村昊澄と1番打者の丸田湊斗

 すでに“髪形自由校”のほうが圧倒的に多い。地方大会からずっと取材している身からすると、甲子園が始まってからの論争にはちょっとした違和感を覚えたのだが、野球界は少しずつ旧態依然の体質から変化しているのだ。

 髪形自由が高校のチームにもたらすのは「許容」と「責任」だ。

 指導者が選手らに自由を与えることで「許容」をする。一方で、選手たちは許容された代わりに「責任」を持った行動を求められる。

 今夏ベスト4に初進出した土浦日大は2016年から髪形自由にしている。その意義を小菅勲監督はこう語る。

「選手を勧誘するために髪形を自由にしているのではありません。自分を大事にする。そもそも髪は自分のものですから。自主性と髪形はマッチすると思っています。自分の髪形に責任を持って清潔感を保ち、仲間に嫌な思いをさせないことを意識する。そこは野球に通じるところもあると思います」

慶応では「チャンスでのフライアウトもタブーではない」

「許容」や「責任」は髪形だけではない。髪形は入り口にすぎず、慶応のエンジョイベースボールなど、楽しい野球と分類されるチームには一定の許容と責任が内在している。

 例えば、チャンスや走者を置いてのフライアウト。「勝つ野球」を標榜する上では御法度とされるが慶応ではそんなことは問わない。

 主将の大村昊澄はいう。

「凡打の結果より、打つべきボールを打ちにいっての凡打なのか、振らなきゃ良かったのを振っての凡打なのか、というのを意識しています。捉えられるか捉えられないかは紙一重。自分たちが打つべきボールを決めて打席に立っているので、それを実際できたかどうかを森林さんは評価してくださっています。ゴロを打ってはいけない場面では低めの変化球を打っちゃダメだよねとか。それをちゃんと意図していて、ゴロを打ってしまった時はしょうがないよねって考え方です」

 今大会で楽しむ野球を体現していたチームには「個」への尊重を感じた。

【2】複数投手制「試合前に“起用の順番”を伝える」

 選手の起用法において、今大会は過去類を見ないほど、多くのチームが「複数投手制」を敷いていた。そのマネジメントは千差万別だったが、選手への尊重を心掛けるチームも少なくなかった。

 ベスト8に初進出したおかやま山陽は4人の継投で勝ち上がった。堤尚彦監督はその信念についてこう語る。

【次ページ】 【2】複数投手制「試合前に“起用の順番”を伝える」

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