ドラフト会議では指名から漏れたが、亜細亜大学が声をかけてくれた。4年後、東都ナンバーワン右腕の評を得るまでに成長し、ドラフト1位でベイスターズに入団。ルーキーイヤーから務めるクローザーの座を守り続けて6年目になる。

亜大時代の山﨑　©︎JIJI PRESS

　だが今シーズン、山崎は試練のときを迎えている。苦しい投球が続き、最終回を投げきることなく降板した試合もあった。

　山崎は自らその話題に切り込んだ。

「ときには投げだしたくなってしまうこともあります。もういいって。9回を投げられないならファームに落としてくれって。でもやっぱり、投げやりになれない自分がいる。『おれ、これで成功してきたんだよな』って思いが自分の中にあるんです」

　経験が、揺らぐ心を支えるのだ。

悔しかった。そこから始まった。

　悔しい気持ちの積み上げが、いつか形になる。必ず、のちに生きてくる――。

「絶対にそれは保証できます。高校、大学と、そういう人生を歩んできたので。自分の体で体現してきたので」

　初めて甲子園のマウンドに立ち、がむしゃらに投げた夏から10年以上が経つ。別格の1年生の後塵を拝した。自身はなんとか無失点に抑えたけれど、試合に負けた。悔しかった。そこから始まった。

県岐阜商に敗れ、号泣する山﨑（右から３人目）ら帝京の選手たち　©︎KYODO

　山崎は苦境を迎えたとき、いまでも見上げることがある。自宅に飾られた「15」の白布を。高校2年夏の悔しさの象徴を。

　そして、新しい明日へとまた立ち向かっていく。

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