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「髪型で野球するわけではない」慶応高の衝撃…森林監督が語っていた“今年はなぜ強いのか?” 甲子園4万人が沸いた清原勝児「野球は本当に楽しい」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/12 11:04
甲子園初戦で北陸を下した慶応ナイン
北陸との試合、攻撃面で言えば「いいピッチャーになればなるほど、追い込まれると苦しい状況になりやすい。だから、1打席で1球あるか、ないかの甘いボールをどう仕留めるか」と分析して彼らは打席に立ち、相手投手陣から9点を奪った。神奈川大会7試合で14犠打を記録したチームが、この試合ではゼロ。小技を駆使せず強打で相手を押し切れた背景には、このような意識もあった。
大村が語ったチームの共通認識について、監督の森林貴彦も満足げに試合を総括する。
「一番はメンタルの安定ですよね。県大会の決勝から2週間ぶりの試合だったので『もうちょっと打てないかな?』と思っていましたけど、初回から積極的に攻撃してくれて最高の9点を挙げることができました。9回の、ちょっとドキドキしながら取られた4点を最低とするなら、1試合で両方経験できたことはよかったです。9対0で勝つより、いい結果だったと思います」
最低と最高を同じ感度で受け入れられ、野球を楽しめる。おそらくこれが、今年のチームのエンジョイ・ベースボールなのだ。
「ニコニコしながら野球をやっている、は誤解」
このようなことからも、慶応義塾の「楽しむ」は、ただ笑みを絶やさず野球をすることではないことがわかる。森林はモットーについてこう教えてくれたことがあった。
「『ニコニコしながら野球をやっている』というのは誤解というか。私の解釈としては、野球を本当に楽しむために『少しでもレベルを上げていこうよ』という呼びかけとしてある言葉かなと捉えています」
今年の慶応義塾は投打のレベルが高い、全国でも指折りの実力を誇るチームだ。
2015年から監督となり、18年と今年に甲子園春夏連続出場へと導いた森林に、両チームの共通点を訪ねたことがあった。