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「髪型で野球するわけではない」慶応高の衝撃…森林監督が語っていた“今年はなぜ強いのか?” 甲子園4万人が沸いた清原勝児「野球は本当に楽しい」
posted2023/08/12 11:04
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Nanae Suzuki
甲子園球場4万の大観衆が沸く。
代打、清原。
甲子園最多の13ホームラン。プロ野球でも歴代5位となる525本ものアーチを描いた稀代のスラッガー、清原和博の次男・勝児が夏の甲子園で初打席に立ったのは、慶応義塾が9-0と大量リードして迎えた7回だった。
清原勝児「声援をいただけて感謝」
3球目。真ん中に甘く入った129キロのストレートを振り抜く。快音とともに放たれた打球がレフトを襲い、スタンドがどよめく。結果はフライだったが、甲子園のファンを満足させる一打だった。
打席について、清原は「少し体勢が泳いでしまいましたけど、感覚はよかったです」と振り返る。それ以上に強調していたのが、自身の心構えだった。
「とにかく楽しんで打席に立つことを念頭に置いていました。すごい声援をいただけて感謝していますし、それを力に変えられるようにと思っていました」
楽しむ。
それは、慶応義塾のモットーでもある「エンジョイ・ベースボール」に通底する。
ピンチでも笑う…本当の意味
1回から5回まで毎回得点とチームが乗っている時だけではない。9回に登板し、北陸打線に捕まり4失点した3番手ピッチャーの松井喜一ですら、マウンド上で笑みがあった。
それは、精神的に追い詰められた際に見せるものでも、虚勢を表すものでもない。野球を楽しんでいるような笑みに映った。
清原と松井。対極の状況でグラウンドに立った2人は、おそらく同じ精神状態だった――そう合点がいったのは、キャプテンの大村昊澄のこんな話を聞いたからだった。
「いいプレーと悪いプレーを想定しながら、1球1球プレーできていると思います」