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日本人が知らない、なでしこジャパン“本当の評価”「ここまでのベストチームだ」日本ファンになる英国人記者、「正直驚いた」敗者スペインはイライラ
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byJFA/AFLO
posted2023/08/04 17:03
スペイン戦に勝利した後、笑顔を見せたなでしこジャパンの猶本光と高橋はな
「スペインのヴィルダ監督は、前の試合からの先発交代はひとり。対する日本は5人を替えてきたが、日本の方がはるかにユニットとして機能していた。なでしこが見せた素晴らしい組織的防御と効率的な得点能力は、優勝トロフィーを引き寄せる力があることを示した」
海外メディアでも、組織力についての言及が多い。
近ごろ、運動部を廃止することになった「ニューヨーク・タイムズ」だが、その穴を埋めるのが昨年買収した「The Athletic」。こちらのマイケル・コックス記者の記事を読んでいたら、この人はなでしこの大ファンだということが分かった。スペイン戦の見出しはこんな感じ。
「日本はこれまでのところ、ベストのチームだ――スペインは日本にどう対処すべきかを知らなかった」
「圧倒的な戦術的勝利」と絶賛
コックス記者は、フォーメーションを説明しながら、スペイン戦をこう分析する。
「スペインはフロント5の攻撃的な布陣を敷き、中でも中盤のクリエイター、プテラとボンマティというバルセロナのデュオを前面に出してきた。しかし、日本はアタッカーの5人に対し、ディフェンダーが確実に対応していた」
コックス記者は、日本が参加国で唯一「3ー4ー3」のシステムを採用している国と指摘し、これがユニークな結果を生んだと書く。実際、ディフェンダーの南萌華は試合後、次のようなコメントをしている。
「去年、スペインと戦って0対1で負けたときは、3バックを始めてから実戦で使った最初の試合だったんです。いまはみんな経験も積んで、戦術の理解度が深まってきたので、ディフェンス的には整備されてきたと思います」
昨年の試合の余韻が、両国に影響を与えていたかもしれない。スペインからすれば、去年とはまったく違った「壁」が出現したという印象だったのではないか。
そしてコックス記者は日本のウイングバックが前線に進出した時にスペースが生まれ、スペインは得点を許しただけでなく、何度も反則によって止めざるを得なかったと書き、「日本の圧倒的な戦術的勝利」と絶賛した。
「じつは男子も“過去最低のポゼッション率”だった」
さらにコックス記者は、昨年の男子W杯との類似点について、「OptaJoe」のツイートを引用している。