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「怪物を生む高校」花巻東が岩手の高校野球を激変させていた…菊池雄星、大谷翔平と戦った男たちが証言「なぜ岩手は“急激に”強くなった?」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2023/06/27 11:02
現在メジャーで活躍する菊池雄星と大谷翔平は同じ花巻東の出身だ
達朗が選んだのは、県内屈指の進学校として名高い盛岡一だった。
このようなチームのピッチャーは、高校野球ではよく「頭脳派」と形容されるが、達朗はまさにそんな選手だった。
最速136kmの右腕である達朗は、左足を上げる速さから、踏み出すまでのタイミングをずらしたりと、時差を有効活用した。さらに、リリースの際の腕の高さやボールの回転も指先で細かく調整していたという。生命線である変化球にしても、スライダーは縦、横と軌道を操り、落ちる球種のパームボールも球速帯を変えていた。
「力と力でぶつかっても、花巻東には絶対に勝てないんで。こちらの力を最大限に発揮しつつ、いかに相手には力を出させないか? ということを常に考えていました」
一方、センバツに出場した雄星は、左腕最速となる152kmをマーク。チームも県勢初の準優勝の偉業を成した。存在がより強大となっていく。
2009年春の県大会準決勝で敗れた盛岡大附の関口は、「ボールが浮き上がっていました。送りバントできなかったんですよ。これは無理だなって」と雄星に脱帽していたが、達朗も同じ感覚を抱いていた。
2009年夏「盛岡一vs花巻東」
2年生の秋に敗れて以来、リベンジの舞台となった3年夏。盛岡一はエースの達朗がほぼひとりで投げ抜き、準決勝で優勝候補の盛岡大附を下して決勝進出を果たした。