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始球式に1日署長、多忙すぎる“りくりゅう”は今…振り付けや筋トレだけじゃない「フィギュアスケーターって、シーズンオフは何してる?」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2023/06/12 17:02
5月10日、バンテリンドームで始球式を行った“りくりゅう”こと三浦璃来と木原龍一
オンラインでの振り付け作業も増加
コロナ禍にあってはその作業も過酷を極めた。例えば国内では屈指の振付師に数えられる宮本賢二氏は、以前の取材で、オンラインでの振り付けも試みたが、どうしてもしっくり来ないことから、やはりリンクで行ったという。その際、感染のリスクを避けるために車でリンクへ出向いたが、ときには10時間以上かかる道のりを自ら運転して往復せざるを得ないときもあったと語っている。
オンラインの活用が盛んになったことは、一方ではプラスの面も生んでいて、振り付けをしたあと手直しをする、あるいはブラッシュアップする際、海外の振付師とオンライン上で取り組むことも珍しくはなくなった。
オンラインのみで作業を行った選手もいる。羽生結弦だ。羽生はコロナ禍にあって、拠点の仙台で振り付けも練習も行っていた。振り付けにあたっては現地に行かず、オンラインで海外の振付師と結び、羽生が主体となって作業した。じかに接する時間なしに行うのは簡単なことではないが、それでもあの完成度高いプログラムを生み出すことができたのは、自身の動作を客観視して把握し、そして構成全体を見渡せる点も含め、総合的なマネジメント能力の高さあってのことだ。
行程はさまざまあっても、基本はシーズンを通じて使用することになるから、プログラムの振り付け作業がきわめて重要であることに変わりない。そして振り付け作業が終わったら氷上での練習でそれを身につけていく。
紀平が語る、オフにあえて“海外で合宿”する意味とは?
そしてシーズン中ではないからこそ、強化のためのトレーニングが欠かせない。
そもそもオフであっても、選手たちが長い期間リンクを離れることはない。日々滑っていないと感覚が損なわれるためだ。だからシーズンオフであっても、振り付けたプログラムの習得のみならず、選手は氷上で練習に励み続ける。ペアやアイスダンスなら、2人そろって練習を続ける。
その上で、シーズンを闘い抜く体力づくりが求められるから、陸上での練習、ランニングやダッシュなどにもシーズン中以上に取り組む。ウエイトトレーニングの度合いは、他競技の選手と比べれば限られている。
また7~8月には合宿を行うケースも珍しくない。所属しているクラブ単位でリンクのある遠方に赴き、氷上練習に加えて走り込みなどを積んで体力のアップに努める。大会が始まってしまえば、どうしてもそこに多くの時間を割けないから、なおさら重要になってくる。
強化は体力面にとどまらない。例えばより高難度のジャンプに取り組むなど、試合のない期間はレベルアップのための時間でもある。むろん、シーズン中もそうした取り組みはなされるが、試合がないからより時間を割きやすい。以前、紀平梨花は4回転ジャンプ習得を目指し、跳んだときに高く上がりやすい高地ということで、アメリカ・コロラド州で合宿を行ったと語っていた。これも1つの例と言えるだろう。