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「ボクの前の最年長は誰でしたっけ?」”ミスター・ダービー”武豊54歳が語った日本ダービーの記憶「有馬記念でも、天皇賞でもなく…」 

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片山良三

片山良三Ryozo Katayama

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photograph byAi Hirano

posted2023/05/22 17:00

「ボクの前の最年長は誰でしたっけ?」”ミスター・ダービー”武豊54歳が語った日本ダービーの記憶「有馬記念でも、天皇賞でもなく…」<Number Web> photograph by Ai Hirano

史上最多のダービー6勝をあげている”ミスター・ダービー”武豊(54歳)が、日本ダービーの記憶と自身の記録について語った

 武は6回目の優勝を果たした昨年のドウデュースまで、ダービーに33回騎乗している。これは彼自身としてもGIレースにおいての最多騎乗で、次位は天皇賞・秋と有馬記念の32回。乗りたいと思うレースの順に多く乗ってきているのがわかる。ちなみに、現役最年長の柴田善臣騎手がダービーに騎乗したのは18回、武の1歳年長の横山典弘騎手は25回である。乗りたいと思っても乗れるわけではないのがダービーで、横山の同期生で、20歳でオークスを勝ち、23歳で有馬記念も勝った熊沢重文騎手は、いまだに未騎乗というのが現実なのだ。

騎乗しなかったダービはーは2回のみ

 武が騎乗しなかったダービーは、'92年の第59回と、'10年の第77回の2回。'92年は騎乗予定だったノーザンコンダクトが直前の故障で回避したことによる不可抗力で、'10年は武自身が3月の毎日杯で落馬負傷して騎乗すること自体が無理だった。

「中3のときにミスターシービーが三冠を達成した菊花賞を京都競馬場のスタンドから観戦したときの景色をよく覚えています。あの豪脚はどんな乗り心地なんだろうって、想像をかき立てながら見ていましたね。そして翌年には競馬学校生としてシンボリルドルフが勝ったダービーを研修の一環として見せてもらいました。最近は、後輩の騎手や若い厩務員に『キズナのダービーを見て、この仕事に憧れました』とか、『ディープインパクトのダービー、競馬学校の研修で見に行ってました』とか、けっこう言われます。ダービーの影響力って本当にすごいんです。

 '92年は、あえて東京での騎乗を選択して、関係者用のスタンドからミホノブルボンの逃げ切りを観戦しました。騎手になってから競馬をスタンドで見たのはこの'92年のダービーが初めてで、その雰囲気をスタンドから確認したかったという興味もありました。でも印象に残ったのは、乗っていた18人がカッコよく見えたこと。『ダービーはここで見ていたらいかんな』と思いましたね。たとえ最低人気の馬であっても、とにかく乗っていたいのがダービーなんです。

 '10年は自宅での療養生活を余儀なくされている最中のダービー。その日の朝になって、思い立って新幹線に乗って東京競馬場に行き、エイシンフラッシュの勝利を見届けました。奮い立つような感情の高ぶりを体験できたのは、やっぱりダービーだったからでしょうね。その後はリハビリがはかどりました」

有馬記念でも、天皇賞でも、ジャパンカップでもなく…

 競馬学校生が寝泊まりする寮の長い廊下には、歴代のダービー馬の写真がパネルとなってずらりと掲示されているのだという。

【次ページ】 「最年長ダービージョッキー」として

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