濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
岩谷麻優が“初の凱旋大会”で伝えた「キラキラでハッピーな感じ」客席から凄まじい紙テープ、ヒールの大江戸隊も楽しそう…記者が見た名場面
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/04/16 17:02
自身初の「凱旋記念大会」で存在感を見せた岩谷麻優
見事な“やられっぷり”からの華麗な反撃
鹿島とキッドは、かつて岩谷と同じユニットだった。鹿島は岩谷とタッグ、6人タッグのベルトを巻いたこともある。キッドは「岩谷麻優を超えたい」という思いから袂を分かち、ヒールになった。言ってみれば、十分すぎるほど気心が知れた敵。岩谷を痛めつけるキッドと鹿島の姿は楽しそうでもあった。
そして攻撃されればされるほど、岩谷の魅力も際立つ。“やられっぷり”のよさも岩谷の持ち味なのだ。思い切り吹っ飛び、顔を歪め、そこから立ち上がる姿にファンは感情移入する。地元の観客ならなおさらだろう。
そこから反撃に転じるのが、岩谷の正統的ベビーフェイスたる所以だ。やられてもやられても立ち上がる。その様がゾンビにもたとえられる岩谷だが、ベースには受身のうまさがある。受身によってダメージを最小限にとどめているから、華麗な反撃も可能なのだ。
加えてこの日のパートナー、岩谷のユニット「STARS」の葉月とコグマが絶妙なバックアップを見せる。3人並んでの「顔面ウォッシュ」から岩谷とコグマの連続場外ダイブ。葉月とコグマをカタパルトにしての串刺しドロップキックは、このトリオならではの見せ場と言っていい。
フィニッシュは岩谷のムーンサルトプレス。分かりやすい、伝わりやすい、そして岩谷らしい大逆転で凱旋マッチは幕を閉じた。
「キラキラでハッピー」なありのままの岩谷麻優
試合後の岩谷は、地元の人々、遠征組のファンへの感謝とともに新たな野望も口にした。昨年、新設されたIWGP女子王座への挑戦だ。
「チャンピオンのメルセデス・モネ、3WAYでタイトルマッチをやる葉月、AZM。この3人の勝者に挑戦したいです」
葉月とAZMは挑戦表明していたものの、この時点では3WAY王座戦は正式決定していなかった。「まだ決まってないんですけど」と葉月を苦笑させるところも、いつもの岩谷。結果、正式に決まった3WAYをモネが制し、岩谷は4月23日のビッグマッチ、スターダム横浜アリーナ大会でベルトに挑戦することになった。
地元の空気が、新たなモチベーションを後押ししてくれたのかもしれない。
「試合はもうボロボロにやられてしまったんですけど。でも楽しんでくれている雰囲気は感じました。“おかえり!”、“この日を待ってたよ!”っていう。東京や関西の人たちが山口を旅してくれる様子もSNSで見ました。それも嬉しかった。試合の時だけじゃなく、この日を迎えるまでずっとワクワクしてましたね。
凱旋試合ですけど、リングの上は今まで通り、いつも通りでした。変に着飾るとダメなタイプなので。ファンのみなさんも、これまでありのままの岩谷麻優を見てきてくれたと思います。
カッコつけるのではなく、いつものキラキラでハッピーな感じを地元の人にも見てほしくて。プロレスは痛いとか怖いっていうイメージがあると思うんですけど、それだけじゃないものを見せられたかなと。“麻優ちゃん、輝いてるね。プロレスラーになってよかったね”と思ってほしかったんです」