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甲子園優勝メンバー「7人」残るも…仙台育英はなぜ“エースを先発させなかった”? 須江航監督が明かした「采配の真意」と「1つの後悔」
posted2023/04/05 11:02
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Kichi Matsumoto
7/18。
仙台育英はベンチ入りメンバー18人のうち、7人が昨夏の全国制覇を経験していた。
「140キロクインテット」と呼ばれ、優勝を支えた豪華投手陣では現エースの高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔が残り、野手も現キャプテンの山田脩也ら4人が主力だった。
うちは12番目くらいだと思っていた
今年のセンバツ。なかば当然のように「優勝候補」に挙げられていたタレント集団は、ベスト8で敗退した。
監督の須江航は、この結果を出来過ぎと言わんばかりに受け止めている。
「これは本当に謙遜ではなく、優勝なんて簡単に考えられませんでしたから」
世間が抱く“錯覚”を訂正するように、須江が「優勝できなかった」背景を説明する。
「ありがたいことに夏春連覇の権利を持っていたのはうちだけでしたから、センバツの優勝というのは大目標として掲げたいものではありましたけど、まだまだ全然。出場校の戦力を冷静に分析した時に、うちは12番目くらいだと思っていましたから」
昨年の秋、仙台育英は東北大会を制し、各地区の優勝校だけが揃う明治神宮大会では1勝。この大会を制した大阪桐蔭に敗れはしたが4-5と接戦を演じた。
このチームを支えているのが、2割7分9厘だった昨秋のチーム打率を補った仙台育英のストロングポイント、投手陣だ。
エースを先発させなかった理由
昨秋のチーム防御率1.79のディフェンス力は、このセンバツでどのチームと対戦しても、何があっても自滅しないかどうか?
それは、須江にとっても挑戦だった。
「普通の起用なら、チームで一番、失点率の少ないエースが先発しますよね。そこから継投していって耐えて勝っていくものですが、それをしていては春に得られるものは何もないと思ったんです」