藤井王位の挑戦権を懸けた王位リーグ戦もメンバーが出そろいました。岡部怜央四段（23）、冨田誠也四段（26）、徳田拳士四段（25）ら四段の若手棋士が一気には入るなど新世代の躍動が楽しみな一方で、羽生九段（31年連続31回目／王位として迎えた18回も含む）の事実が凄まじすぎます。1990年代、2000年代、10年代、20年代とほぼ皆勤賞じゃないですか……。

　あと夫婦での密かなツボとして、菅井竜也八段のツイッターも挙げたいと思います。ひたすら海老をスマホで撮る様子や筋トレでの肉体美、フォロワーとも積極的に交流するなど、2023年も積極的に発信してほしいなあと願ってます！

3）師弟トーナメント＋将棋オールスターが楽しい件

　12月はABEMA師弟トーナメントや様々なイベントも盛り上がりを見せました。ダジャレが大人気の豊川孝弘七段が鈴木大介九段との対局終盤に追い込まれて、いきなり「比叡山！」など叫び始めて、さすがの盤外戦術というか……大盤解説の聞き手だった貞升南女流二段が「何か、おっしゃってましたね」と、きちんと拾ってフォローしている流れも含めて素敵です。

　そのチーム豊川が動画企画で挑んだのが「マッスルモンスター」という相模湖畔にある巨大クライミングアトラクションへの挑戦。28歳の渡辺和史五段はともかく（？）、55歳の豊川七段が嬉しそうに挑む勇気を称えたいです。だって実際その後、夫婦でその場所に行ってみたんですけど、あまりに高くて見学者用の場所にいるだけでビビりましたから（笑）。

　動画で言うと畠山鎮八段（53）が斎藤慎太郎八段（29）とともにマリンスポーツに挑戦して、キレイに海へと落っこちて……いつも思うんですが、棋士の皆さん、年齢を重ねてもなんでお笑い芸人並みに身体を張り続けるんですか（笑）。

　12月25日には明治神宮で「将棋オールスター東西対抗戦2022」が開催され、夫婦で2年連続の観戦ができました！ 惜しむらくはファン投票で選ばれた渡辺名人、大盤解説者の木村一基九段がコロナの影響によって欠場になったこと。特に渡辺名人はこの日のためにスーツを仕立てたというのに！ 2023年こそこの舞台に立つ渡辺名人が見たいです……。

　1手30秒の早指し戦は対局自体は真剣そのものですが、和気あいあいとした場面が数多いのがこのイベントの魅力です（糸谷哲郎八段と山崎八段の掛け合い、谷川浩司十七世名人の解説に佐藤康光会長の奮闘などなど……）。なお休憩時間には編集担当さんとも会う機会が。12月はカタールW杯でヘトヘトだったらしいんですが、久々の将棋取材らしく、ウキウキで楽しんでたように見えましたね（笑）。

リレー将棋で藤井・豊島コンビが笑っちゃったワケ

　余談はさておき、2021年は西軍の5戦全勝だった中で、今回は6局で3勝3敗の大熱戦。決着は「リレー将棋」でつけることに。永瀬拓矢王座・羽生九段－藤井竜王・豊島将之九段という並びだけでも豪華なのに、この日一番の笑いが起きたのは西軍の作戦タイムでのことです。

リレー将棋の様子　©日本将棋連盟

©Junsei Chida

　作戦タイムを取ると藤井竜王と豊島九段の2人が解説会場に来て、盤面の画面を見ながら指し手の意図を合わせる会話をし始めました。すると、永瀬王座が羽生九段に“こう指したらこうなって……”といったばかりに、盤上を指で示す様子が、ガンガン映りこんでました（笑）。

「読み筋、教えてくれてません？」
「でも、フェイクかもしれませんね……」

　藤井竜王と豊島九段が思わず苦笑いを浮かべた様子がなんともキュートでした。結果、永瀬・羽生ペアの勝利になるあたりもまた、いい結末だったのかもしれません。

　真剣勝負はもちろん、驚きのチャレンジやちょっとしたホッコリシーンも、“観る将”的には将棋を楽しむ一要素です。まずは藤井竜王と羽生九段で争う王将戦を皮切りに――2023年も盤上盤外のドラマを凝視できればと思います！＜構成／茂野聡士＞

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。