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原晋監督キッパリ「情報を遮断する指導をしても、選手は伸びない」…では、箱根の常勝軍団・青学大はどのようなチーム作りを目指したのか?
text by
原晋Susumu Hara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/02 06:03
2022年の箱根駅伝にてガッツポーズを作った青山学院大学の原晋監督
理想は「指導者に対しても、自分の意見を言える組織」
しかし、今の世の中には情報が氾濫しています。どんなに情報を遮断しようとしても無理な話です。例えばサッカーの指導者が、自分が選手時代に成果を挙げてきた昭和の指導法で選手を育成していたとします。指導者は、素直に自分の理論を受け入れているように思うでしょうが、選手たちは、「また古臭いことを言っているな」と思いながら従っているだけなのです。インターネットなどを使って本場ヨーロッパで行われている、最先端の試合から新たな技術や戦術を入手できるのですから、それを踏まえた理論でなければ、選手たちが真剣に聞くわけがありません。選手たちが素直に従うのは、監督にそのことを言えないからです。
指導者に対しても、自分の意見を言える組織。それがステージ3以降のチームです。
そのステージに移行するには、指導する側が従来の指導法から切り替えられるかどうかがポイントになります。監督が一方的に指導するほうが、チームをまとめやすいのはわかります。監督としても、仕事をしている気分になれます。しかし監督が考えなければならないことは、チームをもっと強くするにはどうしたらいいか、選手の能力をもっと高めるにはどうしたらいいか。そうすると、次の段階は選手が自分で考える力を養い、そこから出てくる意見や外部の声に耳を傾け、それをチーム強化につなげるステージになるはずです。そうして指導者以上の能力を持った人材が現れたとき、チームはもう1段階高いレベルのチームになっていくことになります。
《つづく》