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「ごくろうさん」オリックス宮城大弥の日本一を恩師・我喜屋優(72歳)も喜ぶ「みんなで育ててきた。謙虚だから伸びたんだと思いますよ」
posted2022/11/09 17:03
text by
前田泰子Yasuko Maeda
photograph by
Naoya Sanuki
日本一に王手をかけたオリックスが大事な一戦で先発を託したのは3年目の若き左腕、宮城大弥投手だった。今年72歳を迎える興南高の恩師・我喜屋優監督は、まだ夏の空気が残る沖縄で教え子の投球を見ていた。
5回を投げて3安打無失点。優勝を決める試合の先発としては申し分ない投球内容だった。
「5-0になったのでこれで決まったと思って、その後は用事があって見てなかったんです。経過を見たら5-4になってて、ちょっとハラハラでしたね。先発の宮城があの投球をしたから勝負が決まったんだと思いますよ。最後の締めくくりの試合で勝利投手になってよかった」
日頃、グラウンドでは常に選手に厳しい言葉を投げかけている我喜屋監督。
「なんだかね、監督と言うよりは父親みたいな気持ちで見てしまって……」
教え子を見つめる視線はグラウンドのそれとは全く違っていた。
プロ2年目で13勝、3年目の今年は11勝と2年連続で2桁勝利をあげた宮城。プロで順調に成長してきた要因を恩師に尋ねた。
愚痴も言わない、不満げな表情も見たことない
「彼の基本的な人間性や取り組む姿勢がいいから、プロで結果を出せたんだと思いますよ。興南の練習は絶対に手抜きは許さない。厳しい練習でも宮城が練習中に愚痴を言ったり不満げな表情を見せたことは全くなかったですね」
その人間性が出来上がったのは小さい頃からの家庭環境にもあったのではないかと我喜屋監督は言う。
「経済的には厳しい家庭だった。普通の子は家に帰れば何でもあるという環境だけど、宮城はそうではなかった。昔の子どもの育ち方というか、欲しいものがなくても辛抱しながら弱音を吐かないというね。そういうことで子どもの頃から生活の中で強い精神力を養ったんだと思いますよ」
弱音を吐かず、辛抱強い。その姿は試合でも見ることができた。