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「生理になると、先頭で逃げたくない…」25歳で突如引退、大分のアイドルジョッキーが直面していた“性差”「競馬場では男子トイレを使っていました」

posted2022/10/30 17:02

 
「生理になると、先頭で逃げたくない…」25歳で突如引退、大分のアイドルジョッキーが直面していた“性差”「競馬場では男子トイレを使っていました」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

20年前の2002年、25歳で突如引退し、競馬の世界から姿を消した小田部雪さん。アイドル的な人気を博した現役当時の話を聞いた

text by

大恵陽子

大恵陽子Yoko Oe

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

「元祖アイドルジョッキー」という表現は、男女平等を目指す現代においてはやや時代錯誤かもしれない。しかし、90年代の人気バラエティー番組「さんまのナンでもダービー」に出演し、ファンからはバラの花束を贈られたり交際を申し込まれたり、というエピソードを聞くと、その表現がしっくり来るほどの人気ぶりが伝わってくる。

 注目の的になっていた今回の主人公は小田部雪(こたべ ゆき)さん。1994年、大分県にある地方競馬・中津競馬場でデビューした女性騎手は、アイドル的人気を博すも不況による競馬場の廃止、移籍、引退と激動の20代を送った。

 JRAではルーキー・今村聖奈騎手の活躍が注目を集めるいま、佐賀競馬の専門紙「馬物語」の予想家として約20年ぶりに競馬界に戻ってきた彼女の半生を追った。(インタビュー記事全3回のうち第1回/続きは#2#3へ)

父から言われた「お前がなれるわけない!」

――父・磨留男さんは元騎手で、小田部さんが5歳の時に調教師に転身しました。小田部さんも騎手を目指すのは自然な流れだったのでしょうか?

小田部雪(以下、小田部) うちには兄と弟2人がいて、兄は中学校に入ってすぐ背が伸びて体重も増えたので騎手になれず、両親は弟が跡を継ぐと考えていたみたいです。「なんで私を飛ばして弟なの?」と思っていて、まずは母親に「私が騎手になりたい」と伝えました。そしたら、「え、アンタがね? 一人娘なのに」と。

――男兄弟の誰かが騎手になると思っていたんですね。

小田部 その後、父にも話をしたんですけど、父は “ザ・昭和の親父”で、たまにちゃぶ台をひっくり返したり、こたつの太い脚を折ってしまうような人でした。とても厳しかったので、「お前がなれるわけない! そんな甘い世界じゃないぞ」と2時間、説教されました。競走馬は男性でも抑えられないことがあるのに、ましてや女性となれば気がかりだったでしょうし、父自身も騎手時代に落馬して怪我を何度もしていたので、なれるわけがないと思っていたんじゃないですかね。泣きながら「1回、試験を受けさせてください」とお願いをして、騎手になるための地方競馬教養センターを受験させてもらいました。

デビューの日、「私を見らんで」と逃げ込んだ更衣室

――それほどまでして騎手になりたいと思った理由はなんだったんですか?

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