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「KUBOコール」や「武房、シャツくれませんか」日本語メッセージの少年、猛プレスに感謝のハグ…“久保建英リーガ100戦目の進化”を撮った
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/09/21 17:03
リーガ通算100試合目、激しいプレスによってELに続く2戦連続アシスト。久保建英は「ラ・レアル」で脱皮しつつある
しかし、徐々に観客の久保への視線が変わってきているのもまた事実だ。
直近のELでの活躍の影響も大きかったか、強い眼差しで日本語で書かれたメッセージ(「武房あなたのシャツを私にくれませんか?」)を掲げる少年がいた。名前が間違ってしまっているのはご愛嬌だ。
イラスト入りメッセージを恥ずかしげに掲げた少年は、父親から“もっと前に行ってこい”と背中を押されていた。
猛烈プレスでのアシストでつかんだ信頼
そしてこの日の活躍で、久保はさらにサポーターの心をぐっとつかんだはずだ。
ツートップの一角にポジションを取った久保は前半17分、相手DFのGKへのバックパスに対して、申し訳程度にプレスをかけるそぶりを見せた。しかしGKがトラップを選択した刹那、一気に加速し猛然と襲いかかった。
迫り来るソシエダFWの速度を読み間違えたGKが、ボールを蹴り出すコンマ数秒前に久保の左足がボールを掻き出すと、相方セルロートがしっかり詰めて先制点を奪った。
得点者のセルロートだけでなく、これを目の当たりにした全てのものが、この得点のほとんどは久保が生み出したものだと直感していたのだろう、得点者のもとではなく、アシストを決めた久保の元へ集まり、ゴールを祝福した。
2試合連続、久保のアシストからネットを揺らすことに成功した19番からはちょっとキツ目のハグが送られた。
しかし直後の19分、ソシエダは相手ショートコーナーからあっさりと失点してしまう。だが、この日のソシエダは完全に中盤でゲームを支配していた。焦りは感じない。
最前線に位置していた久保は、徐々に左サイドライン際に主戦場を移した。
久保、シルバ、メリノのコンビネーションに、相対するエスパニョール右DFのカレロ、オマールは、誰のマークに付けばいいのか曖昧なまま、後手後手に回るのが見て取れた(オマールは後半早めの時間帯に、カレロも75分に交代した)。
勝ち越しゴール後の“久保の打ち合わせ”
久保は、縦への突破からクロスを上げる、またはボックス内へ切り込む、さらには、斜め方向へのカットインではなく、逆サイド方向へ切り込むことで、ブライス・メンデスとのコビネーションも見せ、相手を混乱に陥れた。
マジョルカ時代にはベティス戦やビジャレアル戦で、相手の戦術に久保、マフェオの縦関係での守備がハマらず完敗を喫していた――しかしソシエダに加入した今、逆の立場で行えている事が印象的に映る。