Number ExBACK NUMBER
年間290試合、400投球回! 草野球愛をこじらせ“プロ助っ人”化した山下さんのポリシーは「遅刻しない」《あなたは“3番地”を知っているか》
posted2022/04/05 11:00
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph by
Kenichiro Tazawa
助っ人――草野球愛好者であれば一度はお世話になる存在である。
「野球やろうぜ!」と盛り上がった仲間たちに子どもができたり転勤の辞令が下ったり、あるいは熱意が薄れてしまったり。時間の経過とともに創設メンバーが一人、また一人と顔を見せなくなっていく。それは草野球に限らず大人のサークルではよくあること。嗚呼、週末に試合があるのに9人揃わない。あせるチームのまとめ役(主に火曜日くらいから)。そんなとき「空いているからいいよ」と試合に参加してくれる「助っ人」は何よりありがたい。
助っ人は参加メンバーのツテをたどって見つけるのが一般的だ。別チームの友人、かつてのチームメイト、野球経験者の職場の同僚や後輩などなど。ただ、草野球界には「プロ助っ人」とでも呼ぶべき存在がいることはご存じだろうか? 文字通り「助っ人」専任のような形で縁もゆかりもないチームの試合に参加、草野球を楽しんでいる選手である。ディープな草野球愛好家であれば、一度は一緒にプレーしたことがある程度の人数はいて、「戦力」として自ら売り込む実力者から初心者レベルの中年選手までタイプも多彩。なかには60歳超えのベテランもいたりする。今回は、そんな「プロ助っ人」の世界を紹介したい。
年間100試合、1日最高5試合
「助っ人として参加した試合は、最高で1日5試合、年間で100試合くらいですかね。早朝からナイターまで、物理的には1日7試合も可能だと思いますが、グラウンド間の移動もありますから」
サラリととんでもないことを語るのは東京都在住の山下智広さん(49歳)。「プロ助っ人」として土日を中心にプレーしている草野球選手である。
「助っ人業を本格的に始めたのは2013年。実は当時、所属していたチームはあったんです。でも年間20試合くらいしか活動しないので、もっと試合をしたくなったんですよ」
山下さんには本格的な野球経験がない。少年時代から野球好きで運動神経もよく、遊びでプレーはしていた。ただ、部活のカルチャーが苦手ということで野球部所属経験は皆無。仕事が落ち着いてきた30代後半から熱心に草野球をするようになった。
「当時はプレーに自信がなかったので、もっと上手くなりたかった。しかし、草野球ですから毎日、練習があるわけでもないし、活動日はどのチームも基本的には試合。だったらたくさん試合をするのが一番と考えたんです。そこで友人から教えてもらったのが“3番地”でした」