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「びっくり、びっくり」世界選手権SP1位・坂本花織はなぜあれほど大喜びだった? “3アクセルなしで80点超え”を生んだ表現力
posted2022/03/25 11:05
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
得点を確認したあと、表情は大きくかわった。表情のみならず、手の振りに、身体の動きに、驚きと高揚があふれていた。
「まさか、乗ると思ってなくて、すごくびっくりして。驚き、喜び、驚き、喜び、と交代交代で脳内を駆け巡っていた感じです」
その場面を、当の本人は、やはり高揚を隠せないように振り返る。
世界選手権SPで自身初の“80点超え”
3月23日、フランス・モンペリエで開幕したフィギュアスケートの世界選手権女子ショートプログラム。
北京五輪で銅メダルを獲得した坂本花織は自己ベストを更新し、自身初の80点超えとなる80.32点をマーク。堂々、トップに立った。
得点に表れたように、演技そのものも申し分なかった。
3つのジャンプはすべてきれいに成功させた。
「フリップと、ちょっと仲が悪い感じです」
試合前日にこのように表現し、懸念を抱えていた後半のトリプルフリップ-トリプルトウループもしっかり決めると、拍手が起こった。
ジャンプもさることながら、スピード豊かな滑りとともにリンク全体を広く使う演技だった。
「びっくり、もうびっくり、びっくり」
坂本自身は、1位になったことよりも何よりも、80点を超えたことに大きな意味を感じているようだった。
「うれしすぎと、びっくりしすぎです。『7じゃないな』と思って、『おや?』みたいな。『80』って思って、びっくり、もうびっくり、びっくり。なんか未知の世界です。『トリプルアクセル跳んでやっと80出るだろう』ってずっと思っていて、今まで『アクセルとかなしで80出るのはロシアの子たちだ』と思っていたので、『未知の世界へようこそ』みたいな(笑)」