「佐々木君だけではなく、1番の宮澤（圭汰）君、4番の田代君をすごく警戒していました。長打を狙っている雰囲気があったので、（外角など）手が届くところは拾われるだろう、と。ですから、彼らに対しては『当ててもいい』という言葉が適切かどうかはわかりませんが、それくらいの気持ちで『インコースをしっかり攻めていきなさい』と伝えました」

「麟太郎封じ」を確信した瞬間

　状態を問われれば、試合前のブルペンから浮いたボールが多かったりと、米田は決して万全ではなかった。

　だが、「内角を攻める」と覚悟を決めてマウンドに上がった以上、迷いはない。「気持ちで押し切ることが大事」と腕を振った。

　いける――。

　佐々木を封じられると確信したのは1回、無死一、二塁のピンチで迎えた第1打席の3球目だった。内角への142キロのストレートで空振りを奪い、「ギアを上げれば押し切れる」と佐々木との間合いを掴んだ。4球目以降もファウル2球と打球を前に飛ばさせず、フルカウントからの8球目、140キロの高めストレートで空振り三振に仕留めた。

市和歌山・米田の前に2三振 ©Hideki Suigiyama

「インコースのストレートで詰まらせられたことで手応えを感じました」

　この回はまだ球が上ずり、アイドリング中だった米田のエンジンが温まる。

　2度目の対戦となった3回は、外角、外角、内角高めと布石を打ち、最後は外角高めで2打席連続三振。オールストレート勝負だった。

　このあたりから「持ち味のテンポとコントロールを意識して投げられるようになった」と、いつもの自分を取り戻した米田がマウンドを制圧する。5回の3度目の対決は、この試合最速となる145キロのストレートで佐々木の懐を抉り、サードへのファウルフライ。8回の打席でも内角への143キロのストレートで完全に詰まらせ、ファーストゴロに仕留めた。フェアゾーンに飛ばされた打球はこの打席のみ。米田の圧勝だった。

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