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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
日本フィギュアスケート界の問題点「スケート場閉鎖をきっかけに辞める子どもが多い」深刻なリンク不足で幼児クラスは“75人待ち”も…
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byAFLO
posted2022/03/04 11:03
2020年12月にオープンした「三井不動産アイスパーク船橋」。写真はオープン祝賀イベントでの村元哉中・高橋大輔ペア
「やはり、JR山手線高田馬場駅から徒歩数分の便利なリンクということで需要は大きかったです。我が家もそうですが、シチズンプラザがなくなったことで、今までの倍以上の移動時間をかけて他のリンクに通う子もいますから、選手と家族の負担が増していることは間違いないと思います。他のリンクへ移った子の中には、そこのスケートクラブに空きがなくて1年近く待たなくてはならず、十分に練習できないケースもあると聞きます」
シチズンプラザの跡地は三井不動産が所有し、現在はマンションを建設している。同社は2020年12月に「三井不動産アイスパーク船橋」(千葉県・船橋市)をオープンしているが、加藤さんの言葉から察するにシチズンプラザ利用者の受け皿の役割を果たしきれてはいない模様だ。
「シチズンプラザのフィギュア教室に通っていた子たちの中には、閉鎖をきっかけにスケートを辞めてしまったケースも多い。次世代スケーター育成の意味でも、こうしたリンクの閉鎖は非常にもったいないことです」(前出・加藤さん)
選手だけではなく、これから競技を始めようとするちびっ子にとってもリンク不足は深刻だ。明治神宮外苑アイススケート場は初心者向けのフィギュアスケート教室を実施しているが、参加するには、まずはウェイティング登録から。誰かがやめて欠員が生じた段階で入会の連絡が来るという仕組みだ。オリンピックでのフィギュアスケート人気を背景に子どもたちが殺到しており、土日の幼児クラス(4歳~小1)は75人待ち。ジュニアクラス(小1~中3)でも、30人ほどの待ちがあるという。晴れて入会できるまでには、相当の間、待つことになりそうだ。日ごとに成長している子どもにとって、この機会損失は決して小さくないだろう。
高額な“電気水道代”
これだけ需要があるのに、なぜスケートリンクは減っているのか。まず、氷を張るための維持費として高額な電気水道代がかかること。そして、老朽化した設備の更新に、莫大な改修費が重くのしかかるからだ。たとえば、福岡市で唯一の通年リンクである「パピオアイスアリーナ」は、目下、存廃議論の真っ只中だが、運営する西部ガスによれば、年間の管理維持費は1億円に上っており、累積赤字は20億円超。これに加えてフロンガスによる冷凍設備を環境規制に合わせて刷新するための改修費用が4~5億円必要となり、負担しきれないという。(産経新聞2020年1月30日より)