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那須川天心の「RIZIN卒業マッチ消滅危機」に立ち上がった五味隆典の“漢気回答”とは? 榊原信行CEOが語る大晦日の舞台裏
posted2021/12/30 17:05
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
12月24日、突如として那須川天心vs武尊の大一番が発表された。ふたりに挟まれるように会見に出席したRIZINの榊原信行CEOは、珍しく目の前に用意された水を何度も口にした。会見後の単独取材でその旨を確認すると、榊原CEOは大きく頷いた。
「今日は結構、喉が渇きましたね」
それはそうだろう。一時は「実現不可能」とさえいわれた大一番を成立させ、それを公に発表できるところまでこぎ着けたのだから。榊原CEOは、額に疲労の色を滲ませながらも満足そうだった。
「こんなに多くのマスコミが集まったのは、たぶん那須川vsメイウェザーの発表会見(2018年11月5日)以来でしょうね」
会見のアナウンスは前日の23日。RIZINの運営会社、RISE、K-1からそれぞれリリースが送信された。しかしながら両者が顔を揃えたうえで会見をやるというだけで、対戦の具体的な日時が示されていたわけではない。だからこそ一部のマスコミは「大晦日でいきなり夢の一騎討ちが実現か?」と色めき立った。
榊原CEOの安堵「最悪の発表だけは免れた」
関係者には箝口令が敷かれていたのだろう。どんな発表がされるのか、事前に筆者の耳に具体的な詳細が入ってくることはなかったが、「今年の大晦日に」という噂には首を傾げざるをえなかった。試合日までちょうど1週間、スーパードリームマッチというべき対戦カードを、こんな短い準備期間でやるとは想像できなかったからだ。
果たして会見で榊原CEOは「来年(2022年)6月にやる」と明言した。会場は東京ドームや、許可さえ下りれば新国立競技場での開催も視野に入れ、交渉に入るという。アバウトながら開催日時が具体化したことで、ゴールに向けてのストーリー展開は容易となった。榊原CEOは「スッキリした」と胸を撫で下ろした。
「当然、その一方で『なんだよ、大晦日にやらないのかよ』という不満の声があることは承知しています。最後まで『大晦日にやる』と期待していたファンは少なからずいたと思いますからね。だからこそ今回来年6月にやるということをハッキリと伝えることができて本当によかった」
連日続いた会見では、この世紀の一騎討ちに関する質問に対して、榊原CEOはノーコメントを貫いていた。サービス精神を出してヘタなことでも喋れば、決まりかけていたこともなかったことになってしまう恐れがあったので、慎重にならざるをえなかったのだ。
「『天心と武尊の話は消滅してしまいました』という最悪の発表をすることだけは免れました」