マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
15年前の創部で、甲子園スターもいないのに…社会人野球で台頭する“意外な”大学OB ある大学監督「即戦力になる選手は東都や六大学に行く」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/12/17 11:05
昨年の関東地区大学選手権に優勝した桐蔭横浜大。片山皓心(左下)は社会人のホンダに進み、1年目からエースに
「ホンダは去年の優勝チームですから、開幕戦だったんですけど、エースの片山が鈴木聖歩(JR東日本東北)と対戦して、鈴木の決勝ホームランを片山がベンチから見ているんです。トヨタがNTT東日本とやった試合なんか、喜納の先制ホームランを、トヨタのベンチから西潟が見てる。この2人、同期ですから。ウチが初めて全国優勝(2012年明治神宮大会)した時のレギュラーですからね。野球って……なんか、面白い縁でつながってますよね」
つけ加えるなら、大会8日目、JFE東日本と大阪ガスの試合では、平野暖周(ハナマウイ)と高橋拓已(日本生命)が、どちらも補強選手として対戦している。
15年前に創部されたチームで“甲子園スターはいない”
齊藤監督とは、もう20年ほどのお付き合いになる。
当時、水戸短大附属高のエースで、高校球界トップクラスとの評判だった鴨志田貴司投手(巨人、オリックス)の剛速球を受けにいく取材のために、グラウンドにおじゃまさせていただいたのが、齊藤監督との「1回目」だ。
監督室で冷蔵庫から缶コーヒーを出してくれた齊藤監督が、
「おっと、このまんまじゃ、芸がありませんね」
と、わざわざグラスに氷を入れて、コーヒーを注いでくれた。どっか違うぞ、この人……。
それ以降、いろいろな野球の現場で何度も出会ってきたが、そのたび、私の前にいるのは「齊藤監督」ではなかった。いつも、「齊藤さん」と話している感覚で、そのスタンスで一度も違和感はなかった。
「社会人に行ったOBたちが、みんな活躍している……ですか。いやあ、嬉しいなぁ、そういう見方してもらえるの!」
見え透いた謙遜がないから、こちらも真っ正面から話を突っ込める。
「僕は即戦力として、社会人に送ってますから、選手たちを。社会人のほうだって、1年目から使えると思ってるから、獲ってくれるんだと思ってます」
冒頭から、バッサリやられてしまった。
桐蔭横浜大に入学してくる高校球児たちに、甲子園のスターやドラフト候補として大きな活字で報じられた選手は、これまでほとんどいない。しかも同大学の硬式野球部は15年前、2006年に創部された“新しいチーム”である。
ある大学の監督「即戦力になる選手は東都や六大学に行く」
ある大学の監督が、以前こんなことを話されていた。