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〈金メダル獲得〉松岡修造がラリーで「わ! 取れない!」に「キャハハ!」 パラバドミントン里見紗李奈は“ゆるふわ”だけどスゴく“負けず嫌い”
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byNanae Suzuki
posted2021/09/04 20:00
多くの車いす競技を取材してきた松岡修造さんも、さすがにラケットを振りながらは難しい!
動きの中心は前後のストップ・アンド・ゴー。
松岡「僕、車いすの操作は取材でだいぶ体験していますけど、車いすテニスとはどこが違うんですか?」
里見「車いすテニスは回転しながら流す動きですけど、車いすバドミントンでは前後に動いて止まる動き、つまりストップ・アンド・ゴーが中心です。バドミントンもダブルスでは時々、回転することがありますけど、シャトルのスピードがものすごく速くて目を離せないから、基本的には相手に背中を向けられないんです」
松岡「紗李奈さんの得意な動きって、何かありますか?」
里見「上体を反らせて打つ動きかな。コートの奥深くに返されたクリアショットに対し、体を思い切り反らせて、ぎりぎり打ち返します」
松岡「僕も車いすに乗っていいですか? あ、すっごい乗りやすいな。 僕はリーチが長いから、前も後ろも取れちゃいますね。あまり車いすを動かす必要がないです」
里見「確かに、身長が高い選手は有利です。障害の状態にもよりますけど、身長が高いと手も長いから、ちょっとの動きで返球できて、強いっす」
松岡「やっぱり、強いっすね」
里見「でも、実際にやってみると、想像よりも難しいと思います」
松岡「ちょっと1回、ラリーやってもらっていいですか?」
簡単そうに見えるのに取れない!
初めてバドミントン競技用の車いすに乗り、里見選手とのラリーに果敢に挑戦する松岡さん。持ち前の長いリーチを生かして、里見選手お得意のクリアショットを打ち返そうとするものの、まさかの空振り。
松岡「わ! 取れない! 難しいですね、これ。失礼な言い方だけど、簡単そうに見えるから余計イライラします」
里見「キャハハ! 選手は簡単そうにやってますからね。でも、実際に車いすに乗ってやってみると全然できないというのが、やってみた人の感想。だから体験していただけると嬉しいんです」
松岡「バドミントンの技には、他にもスマッシュやUの字を描くように相手のネット近くに落とすヘアピンショットなどがありますが、何が武器ですか?」
里見「私のクラスはWH1といって、障害のレベルが重く体の状態が悪いので、前後の動きが遅くなるんですね。だから、相手を後ろに下げて前にシャトルを落とすというのが基本的な攻め方になります。一方、スマッシュは本当にチャンスだと思ったとき以外、打ちません。スマッシュを打っても相手にちょこんと前に返されたら、間に合わないからです」
松岡「じゃ、エースを取りに行くというよりも、粘り強くラリーを続けて相手を苦しめる感じですね」
里見「そうです。WH1よりも状態のいいWH2クラスの選手だと、自分が打った速いショットの返球にも対応できるので、スマッシュを打つ速い展開もあるんですけど、私たちWH1の選手は次のショットを自分がどう取るかを考えて、ただ攻めようとするのではなく、ラリーをつなげる戦術が中心になります」