野球善哉BACK NUMBER
“優勝候補”大阪桐蔭があっさり逆転負け…敗因は「なぜエースを登板させなかった?」ではなく「なぜ5点以上取れなかった?」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNanae Suzuki
posted2021/08/23 20:00
近江に4ー6で逆転負け。試合後に涙を流す大阪桐蔭・川原嗣貴投手(2年)
「前半の4点(リード)のままいくとは思っていませんでしたけど、そこから丁寧な攻撃ができなかった。足を絡めたりしたいと思ったんですけど。逆に近江さんは1点1点追い上げてきてしんどい形の試合になりました。粘り強い野球をやりたかったんですけど、逆にされてしまったことが敗因だと思います」
西谷監督「甲子園で勝つことも大事ですけど…」
エースをマウンドに上げずに負けたわけだから、西谷監督の采配を批判する声も当然あるだろう。しかし、この日の決断は決して間違いではない。1週間で5試合を戦わなければいけない過密日程の中で、投手の運用は絶対に無理があってはいけない。
勝敗を目前にすると、甲子園という舞台ではどうしても特定の投手に頼りがちになる。西谷監督がこの日見せた投手の采配には、いい素材を全国から集めながらも、それを甲子園という舞台だけで食いつぶしてしまわないような“配慮”を感じずにはいられない。
西谷監督はこの日の決断はこれからも変わることはないと語っている。
「例年、複数投手で戦っていこうと考えていますけど、やはり一人でも多い投手を作っていかないといけない。選手を怪我させてしまうのはダメですし。勝つことも大事ですけど、一人一人の選手を守っていくのは当然だと思います。500球の球数制限がある以前からそういう考えを持っていましたけど、今、より一層そういう気持ちになっています」
大阪桐蔭が2回戦で大会からあっさり姿を消すことはビッグニュースだ。
一方で、一人の投手に頼らないチームづくりのうえでの敗戦は大阪桐蔭が貫いてきた哲学だ。「王者」「横綱」「優勝候補」「タレント集団」……大会に出ればいつも騒がれるチームは、その面目を保ったまま大会を去る。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。