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「スポンサーになってくれてありがとう!」 セレッソとサポとクラフトビール醸造所の幸せな関係「でも実は僕…」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/07/10 11:02
ディレイラブリューワークス代表の山崎昌宣さん。セレッソ大阪との関係性を明かしてくれた
ピンク色にすることで「セレッソのビール」に
――ピンク色にしたことで、クラフトビールを知らないお客さんも興味を持ちやすそうですよね。
山崎さん:そうですね。ピンクだけど飲んでみるとちゃんとビール、というのは……ただ目立ちたいということではなくて。そうしないと「セレッソがビールを作った!」「俺たちのためだけにチューニングしてある!」というカタルシスを得られないだろうと思ったんです。これは"かます"ことができる、トリックスター的な僕らの強みですよね。「こういうのもあるんだ」っていうのは、凄く褒め言葉なんです。
こういうのもビール、というのは、クラフトビールという存在そのものが広く認知される中で不可欠だ。そんな中で現在の状況についても聞いてみた。
――いきなり2種類のビールをリリースされましたが、観客数が制限されている中でいきなり2つというのは消費量の不安はありませんでしたか?
山崎さん:うちは今、小さいタンクで作っているので、そこは大丈夫なんです。2種類になったのは、うちにはレシピを書ける人間が5人いるんですけど、それぞれ考えて社内コンペをしてみたらなかなか1つに絞れなくて……それに、選べる方が多くの人に合うじゃないですか。サッカーで言えば"どこからでも点が取れる"みたいな方がいいかな、と。
そうやってクラフトビールを作って出店することで、新たな気付きもあったという。
山崎さん:普段ピンクの服なんて着ないよ、っていう人も、試合の時はピンクのユニフォームを普通に着るじゃないですか。お爺さんだって普通に着ていますよね。見る側じゃなくて出る側としてスタジアムに行ってみて、これは"祝いとかハレの日"とか、そういう場なんだな、と思いましたね。
クラフトビールが非日常から日常の一部になるために
スポーツ観戦は非日常の空間を味わう時間でもある。そしてビールを飲むという行為も非日常の時間だ。Jリーグもクラフトビールも、非日常でありながら日常の一部であることを目指している点でも重なっているのが面白い。
山崎さん:だからこそ、気軽に気楽に飲めるものにしたいんです。もうちょっと価格を下げたいんですよね。戦略としてはプレミアムな嗜好品という存在と日常の酒としての存在の二極化で……レギュラーものは地元のコンビニに今あるビールと同じ価格帯で並ぶようなものになっていかないと、1%しかないシェアが5%、10%にはならないでしょうね。
――最近は大手から「クラフトビール」が出る流れがありますよね。
山崎さん:大手が取りに行った層を(ディレイラだけではなく)自分たちが取りに行かなきゃいけないんです。ステップアップを任せきりではダメで、ちゃんとこちらが企業努力をしないと。その流れを嫌うファンや作り手もいますけど、大手がどれだけの努力をして、どれだけの資金を投入して今のビール市場というものを作ってきたか。そこでのリスペクトを忘れてはいけないですよね。
たとえば、サッカーのメガクラブもそうだろう。圧倒的な資金と戦力は忌み嫌われることもあるが、メガクラブの存在があるからこそ――そのリーグは世界中の注目を集め、全体に放映権が入ってくることも確かである。