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“ビッグマウス”皇治は本当に強いのか? RIZIN「ワンナイトトーナメント」は実力をむき出しにする“クソ真面目”な包囲網
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2021/06/26 11:04
那須川天心戦での皇治。パフォーマンスに隠れがちだった本当の実力が明らかになろうとしている
挑発する皇治と付き合わない梅野と白鳥
記者会見で、梅野は自分と皇治について「目指すところは同じだと思う」とコメントしている。
「僕はしっかり結果を出して、その後で知名度がついてくればいいと思ってやってきました。彼(皇治)は知名度を得たのでこのトーナメントが開催される。本当に強い選手を集めてほしい、と」
結果を出すのが先か知名度を得るのが先か、順番の違いだけだと言うのだ。「皇治選手は言動力も行動力も持っている」とも。
そう言われれば悪い気がしないのだが、しかし皇治としては舌戦も含めて試合を盛り上げたいところ。試合中の梅野を揶揄して「ひょっとこムエタイ」と呼び、白鳥に対しては「天心のカバン持ち」とこき下ろした。あげく会見の壇上で白鳥にカバンをプレゼントするパフォーマンス。ここで乱闘でも発生すれば皇治の狙い通りだっただろう。しかし白鳥は付き合わない。あっさりカバンを受け取って写真撮影に臨んだのだった。
皇治にしてみれば調子が狂ったはずだ。あらゆる手を使って試合に向かう熱を高めようとする彼を「真面目」と評する関係者もいる。だが今回は周りの選手が「クソ真面目」といった感じだ。パフォーマンスよりも“実力勝負”の面がクロースアップされやすい状況ではないか。
皇治の“実際のところ”がむき出しになる
強敵に囲まれて、言い方を換えればいいライバルに恵まれて、皇治の実力、その“実際のところ”がむき出しになるのが今回のトーナメントだ。白鳥は公開練習で、皇治についてこんな言葉を残してもいる。
「口がデカいから、周りからナメられがちになるんだと思います。そこまで弱いわけじゃないし、気持ちは相当強い」
結局のところ強いのか弱いのか。いや強いと言えるだけの結果は残しているのだが、それはどのくらいの強さなのか。パフォーマンスに紛れて、見えにくい部分が彼にはある。武尊にも那須川にも、皇治はKOされていない。ただ、それだけでは意味がないことを本人もよく知っている。
「RIZINに殴られにきたわけじゃない。ダウンを取られない競技じゃないんでね、倒す競技なので」
これは那須川戦後のコメントだ。トーナメント開催発表会見では「必死ですよ」という言葉を漏らしてもいる。今回の試合に向けては、ムエタイの名門ウィラサクレック・フェアテックスムエタイジムで出稽古を行なった。