酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
最終回を無失点リリーフ→引き分けても「ホールド、セーブもなし」 クローザーを称える成績がないのは、少しかわいそう【9回打ち切り】
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2021/06/07 17:02
楽天の松井裕樹は17Sにとどまらず、ここまで7回もチームを引き分けに導いている。ではセ・リーグで最も多いのは誰?
セーブもホールドもつかないのは……
前述した通り、引き分けには勝ちに等しい値打ちがある。自チームを引き分けに導いた投手の功績は非常に大きいのだが、何の“ご褒美”もつかないのだ。
正確に言うと「交代完了=Games Finished」という記録はつく。しかしこれは「先発投手以外で最後に投げた投手」にはすべてつくもの。セーブがつくケースはもちろん、点差が大きく開いた状況で投げても、サヨナラ負けを食らっても「交代完了」はつく。投手の「評価」とは言えない数字なのだ。
同点での最終回のマウンドは、見方によってはセーブがつく状況(セーブシチュエーション)よりシビアだ。自分が失点すれば即、負けがつく。セーブシチュエーションなら、2点差以上開いていれば失点してもセーブがつく可能性があるが、同点の状況では失点すれば負けである。絶対に失点できない。
そんなシビアな状況で投げるのに、セーブもホールドも、何にもつかない。試合後、降板した投手にベンチでは労いの言葉をかけられるだろうが、それだけなのだ。
これ、ちょっとおかしいんじゃないか?
「最終回のマウンドで無失点」の成績を調べてみた
当然ながら、球団の査定ではこの状況で引き分けに持ち込んだ投手には、大きな評価ポイントがついているとは思うが、この大役を担った投手を公式に評価すべきではないか、と思う。
ちなみにMLBでは公式戦は原則として勝敗がつくまで行う。新型コロナ禍によって、ルール変更がされて、延長戦になればタイブレークを導入することになったが、それでも引き分けは起用できる選手数が足りなくなるなど例外的な状況を除いてあり得ない。だからこうした問題はほとんど起こらない。
仮定の話であることは承知の上で――同点で最終回にマウンドに上がって無失点で抑えたケースを「KD(Keep a draw)」と名付けるとしよう。
今季どれくらいの投手がKDを記録しているのか?両リーグのKD上位の投手を見ていこう。