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令和の部活事情「帰宅部が1番人気って本当?」「部活でサッカーやるのはカッコ悪い」イマドキ中学生の本音 

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沼澤典史

沼澤典史Norifumi Numazawa

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photograph byGetty Images

posted2021/05/31 17:05

令和の部活事情「帰宅部が1番人気って本当?」「部活でサッカーやるのはカッコ悪い」イマドキ中学生の本音<Number Web> photograph by Getty Images

※写真はイメージ。今回の取材で「うちのサッカー部はもう11人集まりません」という先生もいた

「うちのサッカー部はもう11人集まりません」

 つまり部活への全員参加という建前は、もはや維持できなくなっているというわけだ。少子化の影響で生徒数自体が年々減っているなかで、帰宅部や隠れ帰宅部は増加の一途。スポーツ部活が廃部になったり、他校との合同チームを組まざるを得ない学校もある。教育的効果を求める学校の思いとは裏腹に、スポーツ部活の部員減少は深刻な問題なのだ。

「うちのサッカー部はもう単独では活動不能です。今の3年生が引退すれば、11人にはるかに満たないので試合ができません。おそらく、来年の新入生は試合ができない部活には入らず、地域のクラブチームに加入するでしょう。そして、部活はさらに人数が足りなくなり、また生徒がクラブチームに流れます。この悪循環からは容易には抜け出せない」(宮城県、中学教師)

 学校の部活は、存続の危機に瀕しているとも言えるが、この中学教師は状況を好意的に受け止めているようだ。

「我々も顧問をやるなら部活にやる気のない生徒に対して労力をかけるより、やる気のある子だけに時間を割きたい。帰宅部という選択肢は部活への加入が必須で嫌々参加している生徒にとっても、校務で忙しい顧問にとってもウィンウィンだと思います。教師の長時間労働も叫ばれていますし、実際部活をやりたくない先生もいますから、帰宅部の増加や部活数の縮小を歓迎している声もあります」(前出、宮城県中学教師)

 とはいえ、そうした教師の声はあまり表面に出てこない。学校内で声が大きいのは、部活必要論者の声であり、とくに、生徒指導の観点から部活の重要性を主張する教師が少なくないという。勤務地などを伏せることを条件に、某県の中学校教師がホンネを語ってくれた。

「今は生徒に対して教師の立場がかなり弱い。なにか言葉尻を間違えれば暴言だと保護者から糾弾され、うっかり手でも掴めば体罰とみなされて、教師生命はお終いです。かつてのように、少し強い言動で生徒指導ができないため、それを見透かして反抗する生徒もいます。そんな状況下では、部活は生徒指導の数少ないツール。『学校生活をおろそかにすると試合に出さない』などと暗に仄めかし、授業や生活態度を指導するのです。実際、僕は文化部の顧問をしているんですが、担任である僕の言うことは聞かないけど、自分が所属している部活の顧問に注意されると素直に聞くという生徒もいますからね。これが現実ですよ」

 帰宅部の実体を解剖する中で見えてきた、いまの部活動が抱えている諸問題。これを解決するカギはどこにあるのだろうか。後編では、高校教師たちに聞いた話をもとに考察していく。

(【続きを読む】高校生も帰宅部(約20%)が増えている…現役教師のため息「運動部を減らしたいのにOBOGの反発がすごくて…」 へ)

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