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「これやったら戦いようがあるな…」 中谷正義が“ウクライナの怪物”ロマチェンコ戦に誓う“余裕の勝利”
posted2021/05/29 17:01
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Kiichi Matsumoto
中谷がロマチェンコと対戦する――。4月、日本のボクシングファンの胸を躍らせるニュースが世界を駆け巡った。
元東洋太平洋ライト級王者の中谷正義(帝拳)が、6月26日(日本時間27日)、米ラスベガスで前世界ライト級3冠王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と対戦することが決まったのだ。
ロマチェンコといえば2008年の北京と12年のロンドンでオリンピック2連覇を達成し、アマチュア時代の戦績は396勝1敗とも伝えられるウクライナの怪物である。
プロ転向後は1敗したものの、その後は“ハイテク”のニックネーム通りに精密なテクニックで圧倒的な強さを見せつけて3階級制覇を達成。全階級を通じたパウンド・フォー・パウンド・ランキングでは常に上位にランクされ、多くの専門家から「現役最高ボクサーの一人」と評されていた。だから昨年10月、テオフィモ・ロペス(米)に王座を奪われたときは、世界が「あのロマチェンコが?」と驚いたものだった。
「ロマチェンコは今、世界チャンピオンじゃない」
そのロマチェンコの復帰戦の相手に、一度は現役引退を決意した日本中量級のエースが選ばれた。キャリア最大の大一番が決まった中谷はロマチェンコ戦の打診を最初に受けたときの様子を次のように語る。
「本田会長から『どうだ』と聞かれたので『やります』と。そんなにヤッターという感じではなかったですね。僕の目標は世界チャンピオンになること。ロマチェンコは今、世界チャンピオンじゃないですからね。でも、世界につながる試合になると思うので決まってよかったです」
ビッグチャンス到来にも中谷は涼しげだ。それはそうかもしれない。実力がないのにいきなりスター選手の対戦相手に指名されたわけではないのだ。中谷が大手プロモーション、トップランクのメインイベントに起用された背景には十分な理由があった。