フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
【独占取材】坂本花織21歳、紀平梨花18歳の振付師ブノワ・リショー「大技を大人の身体で学ぶ」…“15歳”に対抗するために
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/04/28 17:01
4月に行われた国別対抗戦での坂本(左)と紀平
「フィギュアスケートというスポーツに、インパクトを与える選手になって欲しい。彼女は優れたストーリーテラーになることができる選手だと思うので、ストーリー性のあるプログラムを与え続けていきたいと思っています」
紀平梨花は「個性を確立しようとしている段階」
今季は紀平梨花のSPも手掛けた。彼女との初めての振付作業はどうだったのだろうか。
「リカはとても身体能力が高く、覚えが早いのですごく楽でした。振付はほぼ1日で完了したので、残りの時間は細部を磨いていくことに費やしました」
このプログラムで特に話題になったのは、彼女が氷に片手をついて側転をする振付である。それについてこう語った。
「ステップシークエンスを振り付けて、何か足りないという気がしていました。私はどの選手に対しても、何か人々の心に残るような瞬間を創り上げようと試みています。普通は氷の上で手をついて側転なんて、怖くてできません。でもリカにできるか、と聞いたら、ちょっと驚いた顔をしたけれど、ためらうことなくその場ですぐにやったんです」
他で見たことのない、ユニークな動きを取り入れたのには理由があった。
「彼女は今、個性を確立しようとしている段階。でも個人的に、過去の彼女のプログラムで記憶に残っているものがなかったんです。それはプログラムが良くなかった、という意味ではない。でも私には記憶に強く残っていなかった。だから彼女の作品を振り付ける時に、人々の心に残る作品にしたいと思いました」
大技の時代に突入した女子のこれからの課題
現在、女子も4回転の時代に突入。採点の比重が、大技に偏りすぎているという声もあるが、リショー氏はどう感じているのだろう。