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「まさかプロ野球選手になるとは…」22歳山本由伸が“オリックスのエース”になるまでの「知られざる少年時代」
posted2021/04/28 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Sankei Shimbun
オリックスのエースナンバーを背負う22歳は、今や球界屈指の存在となった。入団時から彼の成長を支え、間近で見てきた伴走者たちの言葉からは、大いなる目的地への道を猛スピードで駆ける右腕の「秘密」が垣間見えた。
初出:「Sports Graphic Number」2021年3月18日発売号〈若き豪腕に迫る 山本由伸「おっきい理想をこっそりと」/肩書などはすべて当時〉
どうすればあんな球を投げられるのか。
まだ表情にあどけなさが残る22歳、山本由伸が、軽快なテンポで繰り出す剛球に、驚きを通り越してため息がもれる。150km台中盤のストレート。150km超のカットボールや140km台後半のフォークなど、多彩な変化球。その成長速度の速さには誰もが目を見張る。
高卒1年目で一軍初勝利を挙げ、2年目にはリリーフで8回を任された。20歳で迎えた3年目には先発ローテーションに入り、防御率1.95で最優秀防御率のタイトルを獲得。昨年は最多奪三振に輝いた。そして5年目の今年、初めて開幕投手を任される。
先発かリリーフか、東京五輪での起用法も注目される、日本を代表する投手である。
急成長の要因はどこにあるのか。山本にその心当たりを聞いた。
「たまたま周りの人に恵まれたというのが、一番の理由かなと思います」
その「周りの人」の1人が、山本の故郷、岡山県備前市でスポーツ用品店『With Sie』を営む鈴木一平だ。
まさかプロ野球選手になるとは
鈴木と山本の父が少年野球時代の知り合いだった縁で、由伸も小学生の頃、父に連れられて鈴木の店にやってきた。中学生になると、友達と一緒に店を訪れるようになり、鈴木が立ち上げたブランド『Ip select』のグラブを使うようになった。
中学時代に所属した東岡山ボーイズでは主に二塁手で、たまに投手を務める程度。宮崎県の都城高校に進学する時には、『Ip select』の内野手用と投手用、2つのグラブを持っていった。
別のボーイズチームの監督を務める鈴木は、中学生時代の山本の投球を見て、「ええ球投げるやん」とは思った。制球が良かった印象もある。しかしまさかプロ野球選手になるとは夢にも思わなかったと言う。
だが山本は高1の秋から投手に専念するとすぐに頭角を現した。1年時に135kmだった球速は、2年夏に151kmを記録し、スカウトに注目される投手となった。