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「自分にとっては特別な番号だから」 中村俊輔、「46」から“10番復帰”に感じる不退転の決意
posted2021/02/25 06:02
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFLO
中村俊輔にはやはり「10番」が落ち着く。横浜FCで3シーズン目となる'21年、これまでの「46」から背番号が変更された。クラブからの強い要望があったと聞く。
“10番復帰”は意外だった。深い愛着はあろうとも執着はなかったからだ。かつてエスパニョールから横浜F・マリノスに復帰して、しばらくは「25」で戦った。10番への復帰打診はあったが「自分よりもこれからの若い人たちが背負ったほうがいい」とやんわりと断っている。
プロ3年目、20歳のときに託され、責任感を持つことによって飛躍を呼び込んだ。翌年には史上最年少でリーグMVPに輝いている。日本に戻って'14年から再び着用することにはなったものの、有望な若手が着けるべきという持論は変わっていない。
10番という数字がどれほどに重いのか。それは傍から見ても痛いほど伝わってくる。日本代表では98試合中80試合を10番で戦っている。その重さの分だけ、喜びも苦しみも己にはね返ってきた。
'10年の南アフリカワールドカップでは大会直前になってスタメンから外れる経験を味わった。厳しい現実が彼の心に重くのしかかった。
「俺のことで言えばチームの10番がベンチに座っていちゃダメでしょ」
もし10番でなければ、あそこまで苦しまなくてよかったのかもしれない。だが歯ぎしりするようなあの苦しみを乗り越えた先に、2度目のJリーグMVPがあった。
10試合の出場、10番の働きではなかった
10番からも愛された。初の国内移籍となったジュビロ磐田でも背負い、今回も空き番号となったタイミングで声が掛かった。切っても切れない運命なのだろう。
要請に対しては逡巡もあったはず。昨年は1シーズン最少となる10試合の出場にとどまっている。彼のポリシーからすれば、10番の働きではなかった。それでも要請を受け入れることにしたのだから、重厚なる決意を感じずにはいられない。10番ってどんな存在なのか――。随分前に何気なく尋ねたことがある。
「チームを勝利に導く、それに周りに自信を与える存在というのかな。自分にとっては特別な番号だから、ロッカールームで目にするだけでモチベーションが上がる」
番号に愛着を、結果に執着を。不退転の決意が背中から漂う。